本研究では、不安の衝動的な解消が症状の基礎となる精神疾患と脳活動との関係を明らかにし、最終的には疾患の有効な評価及び治療へと繋がる手法を開発することを目的としている。対象とする精神疾患については、衝動性との関連がこれまで明示的に示されてこなかったものの、様々な生物学的・行動モデル的な知見からその関与が疑われる強迫性障害を対象としている。平成29年度は、研究計画遂行の上で重要な脳情報デコーディング技術およびその基礎となる統計的機械学習技術の開発・習得に主に取り組んだ。特に、採用初年度および採用第二年度の研究成果を論文誌に投稿・掲載されることを目指し、執筆・投稿およびレビューへの対応に注力した。まず、脳情報デコーディング技術およびその基礎となる統計的機械学習技術を適用することにより、高い精度で強迫性障害患者と健常者を見分けることが可能な脳活動を同定することに成功し、Scientific Reports誌へと投稿・受理・掲載された。また、健常者および精神疾患傾向のあるサブクリニカル群を対象とした行動実験およびfMRI実験の結果に対して解析を行い、脳全体のネットワークから構成される不安の神経基盤を明らかにした。この成果は、NeuroImage誌へと投稿・受理・掲載された。さらに、これらの研究をとおして獲得した技術をより大規模なデータセットへと適用した研究を実施し、biorxivにプレプリントとして公開、現在国際誌の査読中である。
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