研究課題/領域番号 |
15J10702
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高橋 文緒 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / TDP-43 / 免疫細胞 |
研究実績の概要 |
神経変性疾患の発症メカニズムを解明することを目的とし、関連たんぱく質の解析を行った。神経変性疾患の中でもALS(筋萎縮性側索硬化症)の関連たんぱく質とされるTDP-43がショウジョウバエの中枢神経シナプスに変化を及ぼす知見が得られたことから、培養細胞でのさらに詳しい解析を行った。 ALSでは発症から徐々に末梢の運動神経が特異的に侵され、進行すると呼吸機能が障害され死に至る重篤な疾患である。2008年に患者の病変部位から発見されたTDP-43(TAR DNA binding protein43kDa)は、ALSの発症メカニズム解明への大きな足掛かりになると考えられており、近年では神経細胞内のみならず免疫細胞内でのTDP-43の異常が注目されつつある。ALS患者の免疫細胞内TDP-43は健常な人に比べ増加することや、異常に核外に移行することが分かっている。 培養細胞内でTDP-43たんぱく質が異常に増加する条件を検討し、ALS患者の体内で発症初期に起きている未知の発症原因の解明を試みた。培養細胞では神経細胞だけでなく非神経細胞にも着目することで、今まで解明困難とされていたALSの根本原因に迫れると考えた。様々な条件検討の結果、TDP-43たんぱく質が培養細胞内で有意に増加する原因物質を見つけることができた。ウェスタンブロッティングと共焦点顕微鏡を用いた免疫染色で、明らかなTDP-43量変化を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TDP-43を細胞内で有意に増加させる物質を見つけられたことは大きな成果であった。 また条件設定のための非神経細胞刺 激時のTDP-43量の測定を行っていたところ、非神経細胞刺激時によるTDP-43がリン酸化される という新たな知見の発見があった。研究遂行上 この現象の本質を見極めることは不可欠である ため、追加でリン酸化TDP-43の検出を行ったうえで、免疫染色TDP-43細胞内局在観察を行う必要が生じた。これは、ALS患者の生体内でも起きている病態を再現できていることの一つの指標でもあり、大きな進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、TDP-43が増加するときに関連するたんぱく質を同定し、TDP-43の増加メカニズムに迫りたい。そのためには、免疫沈降法とプロテオミクスを用いてより詳細な解析を行っていきたい。
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