研究課題/領域番号 |
15J10728
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
内海 邑 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 相利共生の進化 / 垂直伝播 / 水平伝播 / 細胞内共生 / シンビオジェネシス / 進化ゲーム理論 / アダプティブダイナミクス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は相利共生系の進化に関する基本理論を構築し、その起源と多様化を明らかにすることである。相利共生系の進化では共生相手に見返りを与えない裏切り者の侵入をいかに防ぐかが重要な問題である。これまでに様々な相利共生の維持機構が知られているが、それらの維持機構自体の進化や多様化は明らかになっていない。宿主の親から子へ共生者が受け渡される垂直伝播も相利共生系の維持機構の一つであり、本年度は特に垂直伝播の進化に取り組んだ。 原生動物と共生する藻類など、単細胞性宿主と共生する細胞内共生者の多くは、宿主と細胞分裂が同調している。この分裂同調により、細胞内共生者は宿主細胞間で過不足なく垂直伝播され、宿主内で安定して維持されている。しかし、共生者にとって、垂直伝播のために宿主の遅い分裂に同調するのは、分裂率を下げることになり一見逆説的である。 そこで本研究では、共生者の分裂率と宿主による細胞内消化(共生者の死亡率を制御)の共進化動態をモデル化し、共生者の分裂率を通した垂直伝播の進化を解析した。アダプティブダイナミクス理論を用いた解析の結果、共進化の帰結は、共生者がオルガネラ的に振舞う場合と、共生者が溶菌ウイルス的に振る舞う場合があった。オルガネラ化の場合では、宿主が共生者の消化を抑えて、共生者も分裂を自粛することで、垂直伝播が安定的に行われた。一方、溶菌ウイルス的な場合では、共生者が限りなく速く分裂し、宿主も対抗して共生者を迅速に消化するように進化する軍拡競争が生じた。これらは双安定的で、実際の細胞内共生系で相利共生と寄生の間の進化的な移行が稀なことに対応すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数理モデルの構築と解析は前年度の予定どおり順調に進み、期待した成果も得られている。また、今後の研究についてもすでに着手しつつあり、解析の道筋は得られている。
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今後の研究の推進方策 |
申請者はこれまでの研究で、相利共生の利益が共生者のみならず宿主にとっても高ければ、共生者が分裂を自粛し垂直伝播するように進化することを明らかにした。この結果を踏まえて、本年度は垂直伝播と相利共生の進化動態について分析する。垂直伝播の進化に相利共生が必要だが、その一方で垂直伝播自体が相利共生の維持機構として働くため、垂直伝播と相利共生は相互に依存している。垂直伝播と相利共生の進化的関係は従来の理論研究でも扱われてきたものの、その共進化ダイナミクスの解析は十分になされていない。特に、細胞内共生では宿主と細胞内共生者の適応度が複雑に依存しあっているが、そのような適応度の相互依存性を考慮した分析はなされていない。そこで、今後は、まず細胞内共生による宿主と共生者の適応度の相互依存構造を明らかにする。そして、この適応度の依存構造をもとに、垂直伝播と相利共生の共進化動態を明らかにする。 また、垂直伝播に先立って相利共生が進化しているためには、水平伝播型相利共生系の維持機構である宿主による裏切り者の差別が必要である。しかしながら、差別によって相利共生系が維持されている状況での、垂直伝播率の進化は全く分析されていない。特に、従来の理論研究からは、差別の進化する条件と垂直伝播の進化する条件は相容れないとされているため、新たな分析が必要である。そこで、上述の垂直伝播と相利共生の共進化では、発展として差別の進化を加えた分析も行う。 今後はまず、前年度の成果を論文にまとめ投稿する。続いて、上述の研究を進め、年度内の論文投稿を目指す。
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