プロスタグランジンD2(PGD2)は、主に肥満細胞から産生される生理活性物質である。喘息患者の気管支肺胞洗浄液中に多くのPGD2が産生されることから、PGD2は喘息の発症、進行に何らかの役割をになっていると考えられてきたが、その役割はわかっていない。気道粘液ムチンは、生体防御反応に重要である一方で、喘息患者で見られるムチンの過剰産生は呼吸困難を引き起こすためムチン産生の制御は重要である。平成29年度は、喘息死の原因となる粘液(ムチン)産生に着目して研究を行った。 ①PGD2の合成酵素欠損マウスでは、過剰なムチン産生を伴い喘息症状が悪化した。 ②気道の粘膜に浸潤してきている肥満細胞が強くPGD2合成酵素を発現していた。 ③PGD2の合成酵素阻害は、気道上皮細胞からのムチン合成には影響を与えなかったが、放出は抑制した。またPGD2受容体の作動薬処置では、ムチンの合成および放出を促進させた。 これらのことから、PGD2はムチン合成、放出を制御する因子であることが明らかとなった。
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