研究実績の概要 |
研究目的・内容 本研究では、カチオン性の多環芳香環骨格を有する新規ホスト分子を構築し、その分子内包能を明らかにした後、光触媒反への展開を目指した。これまで我々の研究グループでは、アントラセン環骨格を有する湾曲型ビスピリジン配位子を共有結合で架橋し、カチオン性のボウル状及び、チューブ状分子の合成および分子認識能を報告している(K. Yazaki, M. Yoshizawa et al., Chem. Commun., 2013, 49, 1630, K. Yazaki, M. Yoshizawa et al., Nature Commun., 2014, 5, 5179)。本年度は、アクリジニウム骨格を導入したジカチオン性ビスピリジン配位子を合成し、これとPd(II)イオンとの錯形成により、M2L4カプセル錯体の構築を達成した。また、その分子認識能を明らかにしたので報告する。 (1)カチオン性構造体の構築 新規ビスピリジン配位子は、アクリドンを出発原料として2段階の反応により合成した。この配位子とPd(II)イオンを2:1の比率で混ぜることで、12価のカチオン性M2L4カプセル錯体の構築を達成した。また、X線結晶構造解析の結果から、新規カプセル錯体は、8つのアクリジニウム骨格に囲まれた約1nmの内部空間を有することが明らかになった。また、Pd(II)イオンとジカチオン配位子の比率を1:1に変えることにより、8価のM2L4チューブ錯体の構築にも成功した。 (2)電子豊富なゲスト分子の内包 カチオン性M2L4カプセルは、水中でアニオン性のトリフルオロボレート塩を内包した。その内包状態は、各種NMRスペクトルにより明らかにした。また、分子カプセルは、中性分子を内包しないことから、カチオン性空間の特性を生かした分子認識が可能であることが明らかになった。
|