研究実績の概要 |
前年度の研究では,周波数の異なる2音 (A音,B音) を組み合わせたABA音列を用いて,音の知覚的体制化 (2音をひとまとまりとして捉えるか: 一音脈知覚,2つのまとまりとして捉えるか: 二音脈知覚, 音脈分凝) の違いに応じて,脳幹の神経活動が変化することを明らかにした.脳幹の神経活動だけでなく,脳幹より上位の視床・聴覚野レベルの神経活動も知覚状態に変化することが明らかとなった.また,知覚状態の変化に伴い上位の神経活動が脳幹の活動よりも早く生じることがわかった.本年度は,昨年度国際誌に投稿した上記の内容について,査読に対する修正を行った (本年度受理). これまでの研究では,A音とB音の周波数差を手掛かりとした知覚的体制化について調べてきた.しかし,周波数差の手掛かりがなくても,音の振幅の時間変化 (振幅変調) の差を手掛かりとした場合も音脈知覚の変化が生じることが知られている.本研究では,周波数差を手掛かりにした場合 (TONE条件) と振幅変調の差を手掛かりとした場合 (AM条件) について知覚特性を比較し,音脈分凝の知覚メカニズムを探ることを目的とした.2条件の比較の結果、(1) 周波数差と振幅変調の差が音脈分凝の起こる割合に与える影響は,異なるレベルに存在する聴覚系の周波数分析機構と振幅変調分析機構の特性の違いから説明できること (2) TONE条件の方がAM条件に比べて知覚交替の回数が多いこと,が明らかとなった.これらの結果を論文にまとめ,国際誌に投稿した.査読に対する修正を経て,本年度受理された.
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