前年度に引き続き、in vitro及びin vivoの2種類の実験系を利用・応用することで、姉妹染色分体間接着因子コヒーシンによる遺伝子発現制御メカニズムを解明することを目的として研究を継続した。 まず、in vitroの実験系に関しては、前年度に引き続き、遺伝子発現制御を調べる手法として、1980年代から転写研究に利用されてきた「in vitro pre-initiation complex assembly assay」と「in vitro transcriptional activation assay」の確立と実験プロトコルの改善・検討を主として行った。その結果として、実験系の確立・実験結果の安定化が可能となった。また、これにより、コヒーシン及びコヒーシンローダーが複雑な遺伝子発現制御反応の中でも、特にPausingと呼ばれるRNAポリメラーゼⅡの転写一時停止反応~転写再活性化(転写伸長反応)の段階で転写反応に寄与していることが明らかとなった。 また、in vivoの実験系に関して、転写伸長阻害剤を加えることで、遺伝子の転写開始点付近にコヒーシンローダーが蓄積することがChIP-seq法により確認された。また、阻害剤を除くと、その蓄積が解消されることも同時に明らかとなった。これにより、in vivoにおいてもin vitroの結果と同様に遺伝子の一時停止反応~転写伸長反応にコヒーシンローダーが寄与する可能性が示唆された。また、コヒーシンローダーが直接的に転写メディエーターや転写伸長複合体と相互作用する可能性を示唆するデータも得られた。 以上により、コヒーシン及びコヒーシンローダーがRNAポリメラーゼⅡの転写一時停止反応~転写伸長反応の間で機能し、遺伝子の発現制御に寄与していることが以前よりも明確に示すことが可能になったと考えられる。
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