研究課題/領域番号 |
15J10954
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
津田 亜由美 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | エナンチオピュア / ロタキサン / 高選択的 / 動的分子認識 / トポロジカルキラリティー |
研究実績の概要 |
有機触媒を用いた速度論的分割により、トポロジカルキラリティーを持つ超分子の不斉識別を行った。反応条件の精査により、高選択性の発現には触媒/基質比と適切な温度設定が重要な鍵を握ることを明らかとした。見出した最適条件でロタキサンの速度論的分割を行った結果、エナンチオ選択性が劇的に向上し、トポロジカルキラリティーを持つ超分子の世界初の高度な分子変換を達成した。 また、トポロジカルキラリティーを持つ超分子のさらに高度な不斉合成を目指し、ロタキサンの動的速度論的による不斉合成研究にも取り組んだ。軸成分と輪成分が会合するとシュードロタキサンを形成するが、このシュードロタキサンは軸成分が輪成分に対してランダムに貫通するためラセミ体となる。そこで、シュードロタキサンにエンドキャップを付してロタキサンとする過程で不斉有機触媒を用いることで、動的速度論的分割によるロタキサンの不斉合成を検討した。反応を検討するにあたり、まずDMAP触媒を用いたロタキサンの効率的合成法を開発した。次に、開発したロタキサンの効率的合成法を用い、不斉PPY (4-ピロリジノピリジン) 触媒の存在下、軸成分末端に水酸基を有するシュードロタキサンのアシル化による動的速度論的分割を検討した。種々の構造の軸成分と輪成分から成るロタキサンに対し、その不斉合成を精査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トポロジカルキラリティーを持つ超分子の不斉識別に取り組んだ。これまでに有機触媒を用いた速度論的分割によってロタキサンの不斉識別の研究を遂行してきたが、今年度は反応条件の精査により、選択性が劇的に向上し、より精密な分子変換を達成した。また、トポロジカルキラリティーを持つロタキサンの動的速度論的の研究にも取り組み、触媒反応を検討すると共に、DMAP触媒を用いたロタキサンの効率的合成法も開発した。様々な軸成分と輪成分から成るロタキサンの構造を提案し、開発したロタキサンの合成法を用いて、その不斉合成を行った。 また、今年度の夏には世界7か国の研究者が集まるフランスの欧州生物化学研究所に3か月間留学した。多言語圏の人々との交流や活発な議論を経験することで、海外の研究水準を理解し、日本学術振興会の当別研究員として世界に通用する人材となる自信を身につけた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に開発したDMAP触媒によるロタキサンの合成法を、動的速度論的分割によるトポロジカルキラリティーを持つロタキサンの不斉合成に応用する。現在様々な軸成分と輪成分から成るロタキサンの構造を提案し、不斉合成の選択性の向上を図っているが、そのHPLC解析条件の検討が未だ不十分である。今後は合成した各ロタキサンのHPLC分離条件を確定し、詳細に選択性の解析を行う。また、エンドキャップはアシル化剤となるため、エンドキャップの構造はアシル化触媒による反応の選択性に大きく影響すると予想される。したがって、軸成分や輪成分だけでなく、種々のエンドキャップも検討する。さらに溶媒や各試薬の当量など、反応条件も精査する。 また、申請者は平成28年度から学位取得に伴い研究機関を変更する。これまでの研究室は超分子の取扱い経験が乏しく、申請者が超分子化学の精密不斉合成を一から切り開いた。一方、今後の所属研究室は超分子の経験が豊富である。そこで、今後の所属研究室では幅広い知識を吸収しつつ、これまでの超分子化学の経験を生かし新たな研究を遂行してゆく。今後の所属研究室はこれまでとは分野が随分と異なる研究室である。これまで鍛えてきた分子を精密に扱う能力を、よりスケールの大きい超分子を扱う化学分野に持ち込み、これまでの強みを生かしつつ視野を広げた新たな超分子研究を展開する。
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