研究課題/領域番号 |
15J10955
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小田切 歩 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 協同過程 / 数学的概念 / 概念的理解 / 相互作用 / 説明構築 |
研究実績の概要 |
本研究では,数学授業での協同過程を通じて個人の理解が深まるメカニズムを,関連づける概念(数学的概念と日常的事象,数学的概念間),根拠とする知識(数学的,日常的,両方),相互作用のプロセス,という観点から明らかにすることを目的とした。そのために,まず,以下の3つの研究において,クラス単位の協同過程の有無による,個人の理解の深まりの違いをみるための実験授業を行い,その記録を分析した。 研究Ⅰ(高校生,日常的な題材使用)については,前年度に得られた成果を投稿した論文が,国内の学会誌『教育心理学研究』に採択された。 研究Ⅱ(高校生,日常的な題材不使用)については,協同過程において,生徒自身の既有知識を基にした定義の明確化を伴って,解法間の関連についての個人の説明構築が促されることで,個人の数学的理解が深まることが示された。また,協同過程において,教師による支援として,数学的問題解決プロセスの統合・探究プロセスの振り返りを促すことの重要性が示唆された。そして,この成果を国内の学会誌『日本数学教育学会数学教育学論究』に投稿した(査読中)。 研究Ⅲ(中学生,日常的な題材使用)については,協同過程において,非発言者を含む個人の数学的な知識を根拠とした解法間の関連についての説明が促進され,それが変化の割合とグラフの傾きの解釈の促進につながることが示された。そして,この成果を,国内の学会誌『日本数学教育学会数学教育』に投稿した(査読中)。また,研究Ⅲに関連して行った,中学校の数学教科書の問いの検討について,まず,前年度までに得られた成果を,国内学会『日本教育心理学会第58回総会』のポスター発表にて発表した。そして,その問いの構成についての分析を追加し,国内の学会誌『読書科学』に投稿した(査読中)。 さらに,算数授業での協同過程を通じた個人の数学的理解の深まりを検討するための実験授業も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画通り,まず,研究Ⅱ,Ⅲについて,記録の分析,および,得られた成果の学会誌への投稿を行った。また,研究Ⅲに関連して行った,中学校の数学教科書の問いの構成についての研究についても,得られた成果に関して,学会発表,および,学会誌への投稿を行った。 さらに,授業での協同過程を通じた個人の数学的理解の深まりについて,より多面的に検討するため,算数授業においても,小集団活動とクラス単位の協同過程の有無による,個人の理解の深まりの違いをみるための実験授業を,2回行った(記録の分析は平成29年度を予定)。 しかしながら,研究再開準備支援期間ということもあり,育児との両立のために,月に1度予定していた東京大学での個別論文指導(研究打ち合わせ)の回数を減らすこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に行った,算数授業での協同過程に関する2つの実験授業(研究Ⅳ:従来の算数授業で行われている小集団活動を取り入れた授業の効果(教師による解説を行う授業と比較して),研究Ⅴ:研究Ⅰ~Ⅳをもとにした算数授業での協同過程のデザインとその効果)の記録を,整理し,分析する。そして得られた成果を,研究Ⅳについては,国内の学会誌『日本数学教育学会算数教育』に,また,研究Ⅴについては,国内の学会誌『教授学習心理学研究』に投稿する。 そして,研究Ⅰ~Ⅴを含む,博士課程の間に行った研究をまとめ,博士論文を執筆し,提出する。 その後,小学5年生の算数授業において,協同過程を通じた,割合の理解に関する個人の理解の深まりをみるための実験授業を行い,その記録を整理・分析し,国内の学会誌『日本数学教育学会算数教育』に投稿する。 また,平成28年度に行った,中学校の数学教科書の問いの構成に関する分析のうち,国内学会『日本教育心理学会第58回総会』のポスター発表後に,分析を追加して明らかになった部分を,国内学会『日本教育心理学会第59回総会』のポスター発表にて発表し,全体的な結果についても,自主シンポジウムにて発表する。これに関連して,算数教科書の問いの構成についても検討するために,教科書購入費として,中央教育研究所の教科書研究奨励金(もしくは博報財団の児童教育実践についての研究助成)に応募し,中学校の数学教科書と同じ枠組みを用いて分析する。
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