1.Aβ25-35脳室内投与マウスの認知障害に対するチペピジンの改善作用におけるドパミンD1受容体の関与について、行動薬理学的に検討した。新奇物体認識試験において、チペピジン(40mg/kg)はAβ25-35の脳室内投与により誘発される認知障害をvehicle投与マウスとほぼ同程度まで改善した。ドパミンD1受容体アンタゴニストであるSCH23390(0.02mg/kg)の前処置により、チペピジンのAβ25-35誘発認知障害改善作用は完全に消失した。したがって、チペピジンのAβ25-35誘発認知障害改善作用にドパミンD1受容体の活性化が関与することが示唆された。また、ドパミンD2受容体の関与についても予備的な検討を加えた。 2.APP23マウスの空間学習障害に対するクロペラスチンの効果を検討した。8-9ヶ月齢のAPP23マウスおよびWTの同腹仔に、alzetミニ浸透圧ポンプmodel 2004を埋め込み、クロペラスチン(40mg/kg/day)または生理食塩水を28日間持続投与し、モリス水迷路試験により空間学習を評価した。その結果、クロペラスチン(40 mg/kg/day)の持続投与は、運動機能に影響を与えることなく、APP23マウスの空間学習障害を改善することが示唆された。これらの成果は、GIRKチャネル抑制作用をもつ薬物が、未だ根本的な治療法が確立されていないアルツハイマー病に対し、脳内ドパミン系の活性化という、これまでの治療薬とは異なるメカニズムに基づく、新規治療薬となる可能性を示した点で、非常に意義深いものである。
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