研究課題/領域番号 |
15J10977
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩谷 昌之 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 趣味 / 文化 / テキスト分析 / 鉄道写真 / 鉄道模型 / 雑誌 |
研究実績の概要 |
本年度は、関連する雑誌資料の収集および、それを基としたデータベースの作成・分析に注力し、大きく分けて以下の二つの成果を得た。 第一には、鉄道趣味の中でも、写真に関する領域についての実証的な知見である。具体的には、代表的な鉄道趣味雑誌である「鉄道ファン」の文書を収集後、1961年から1979年までの読者投稿欄「さろん・かー」の記事全てをデータ化し、計量テキスト分析を行った。これにより、当該期間内の記述を通時的に、かつ遺漏無く押さえることができた。この悉皆調査の利点として、データの不在を数量的に指摘できる点が挙げられる。当該雑誌の資料的特性を把握した上で、中でも写真領域に対象を絞って内容分析を行った結果、カメラの領域における芸術性や写真技術が、鉄道趣味の領域における記録性や鉄道への愛情と結合し、新たに鉄道写真というジャンルを生み出し成熟させると共に、その魅力をカメラ領域へと還元させるという、鉄道趣味領域とカメラ領域との間にある相互作用の姿を示す記述を確認することができた。これは本研究が志す、趣味領域とその外部領域との間にある構造の解明を、一段階進めるものであった。 第二には、雑誌資料収集の達成である。複数の鉄道趣味雑誌をはじめ、戦前・戦中の貴重なものを含めて、日本各地から資料を収集することが出来たのは重要であり、来年度に続く分析を充実させるものと期待される。本研究において特に重要な研究対象は、鉄道趣味における写真領域と模型領域であり、後者については模型工作の系譜の中で、鉄道模型がどのように捉えられてきたかを押さえる必要がある。中でも少年雑誌「子供の科学」目次の網羅的収集の達成は、その必要に応えるものであろう。当該雑誌については、1924年から1960年までに期間を限定し、今後は目次のデータベースを作成してテキスト分析を行う予定である。現状では7割ほどのデータ入力を終えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、とりわけ雑誌資料の収集およびデータベースの作成に重心を置く結果となった。データ分析にも着手し、一部内容については第88回日本社会学会大会にて口頭発表を行った。また、そこでの議論を基に再構築した論文を以って、博士論文の予備審査を通過している。データのクリーニングをはじめとしたデータベースの精緻化に時間を要したため、当初計画していた発表・報告には遅れが生じているものの、一方で網羅的な資料収集および貴重資料へのアクセスを達成しており、一定の成果を収めていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
主として、本年度に作成したデータベースを基に、テキスト分析を進める予定である。必要に応じて、関連雑誌についてもデータ化および、追加の資料収集を行う。また、企業や個人を対象とした聞き取り調査への同行も計画中である。
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