研究課題/領域番号 |
15J10999
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松澤 淳 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / 芳香環二水酸化酵素 / 電子伝達 / タンパク質間相互作用 |
研究実績の概要 |
Oxy:生成物複合体の構造解明を目指し、carbazoleを挿入した還元型Oxyの結晶に対して酸素暴露や過酸化水素によって酸化処理を行い、顕微分光により酸化型であることを確認した結晶から構造を取得したが、明確な生成物の電子密度を確認することが出来なかった。結晶の酸化が困難だったため、酸化型Oxyの結晶に対して生成物類縁体である2,2’,3-trihydroxybiphenyl (THBP)を挿入したところ、Oxy:THBPの構造を取得できた。現在この構造の精密化を行っている。 還元型Fdの構造解析に関しては結晶化溶液の脱酸素を効率的に進めるため、脱酸素処理した粉末から結晶化溶液を調製し結晶を作製したが、還元状態を維持出来ていなかった。 ITCを用いた解析では、バッファーの組成、バッファー交換の方法など実験系の検討を行った後、Oxy、Fdの酸化還元状態を制御してITCを行った。Oxyは還元されるとFdとの親和性が低下すること、Fdの還元により吸熱反応が発熱反応に変化することが分かった。より正確なデータを取得するため、今後もデータ取得を行う。 ROのコンポーネント間相互作用を解明するため、CDOのOxy:Fd複合体の結晶化スクリーニングを行い高分解能の結晶を得たが、Fdを含まないOxyのみの構造であった。またFd単体の結晶化スクリーニングも行ったが構造は得られていない。Fd結合部位を生化学的手法により決定するため、Oxyのアミノ酸置換体16種の発現用ベクターを作成し、全てのタンパク質の発現を確認した後、CDスペクトル測定によって主鎖構造に変化がないことを確かめ、コンポーネント間電子伝達速度について一連のデータを取得した。今後は繰り返し実験を行うことでより正確なデータを取得する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Oxy:生成物複合体の結晶構造解析に関しては当初の計画とは異なる方法だがOxy:生成物複合体の構造を取得できており、概ね予定通りに進行している。今後も還元型Oxyの結晶の酸化方法について検討していく。 還元型Fdに関しては2年がかりで構造決定を行うことも考えられたため、進捗状況としてはさほど狂いは生じていない。しかし計画段階で予定していた手法でも酸化還元状態を維持できていなかった為、原因を探っていく必要がある。現在使っている沈殿剤は非常に粘性が高く、脱酸素が難しいと判断した場合は他の結晶化条件を探っていくことも必要と考えられる。 酸化還元状態を制御したITCに関しては実験系の構築が完了しており、実験を繰り返し行う必要があるが、概ね予定通りに進行している。 CDOの結晶構造解析に関しては二年中の結晶化を目指しているため、こちらも予定からの大きな遅れはない。Fd単体及びOxy:Fd複合体での結晶化条件のスクリーニングについて今後も続けていく。Fdはこれまでに結晶が得られていないため、バッファーや濃度に関してもう一度検討を行う。生化学的解析についてはアミノ酸置換体の作成が完了し、発現させたタンパク質に主鎖構造の変化がないことを確認しているため、今後データの連数を増やしていく。
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今後の研究の推進方策 |
得られたOxy:生成物複合体の構造を既知の基質複合体の構造と比較し、基質と生成物の結合に関わるアミノ酸残基の違いを調べる。見つかったアミノ酸に関してはアミノ酸置換を行い、基質変換能やITCによって活性比較を行い、その残基の機能の特定を行う。 還元型Fdに関しては、還元状態が酸化状態に変わるタイミングを探っていく。具体的には還元型Fd溶液での顕微分光データを取得し、操作の違いによる酸化還元状態の違いを確かめる。また酸化が結晶化溶液に由来する場合は粘性が低い条件での結晶化を試みる。 酸化還元状態依存的なITCに関しては構築した実験系に従って実験を繰り返す。 CDOの複合体の結晶化に関してはこれまでと同様に結晶化条件のスクリーニングを進める。OxyとFdを混合した条件での結晶が得られない場合、クロスリンクなど別手法を導入して結晶化を進める。活性測定に関しては繰り返し測定を行っていく。
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