昨年度に回折データを取得したOxy:生成物複合体のについて2.30オングストローム分解能で構造を決定した。この構造の中で生成物は、これまで基質を固定するのに重要だと考えられてきたPhe275だけでなく、Phe329の芳香環とも相互作用を行っていることが明らかになった。CARDOはbiphenylに対しても高い活性を示すことが知られていたが、biphenyl型の物質に対しては生成物と同様に固定していると考えられる。過去の研究から、Phe329はCARDOの酸化活性に大きな影響を与える残基であることが分かっており、今回は構造の面からその理由の一端を説明することが出来た。 還元型Fdについては、結晶化溶液中の溶存酸素が原因で結晶化時に酸化していると推定されたため、今年度は脱酸素剤と長期保存することで溶存酸素を減らすことを試みた。その結果、結晶の形がこれまでと異なる結晶を取得し、顕微分光を用いて結晶の吸光スペクトルを調べたところ還元型を示したため、この結晶を用いて回折データを取得し、分解能1.79オングストロームで構造を解明した。現在解析中であるが、酸化型Fdと比較すると電子伝達中心である[2Fe-2S]クラスター周辺の主鎖構造が2か所変化し、水素結合ネットワークが変化していた。酸化還元状態に依存した構造変化や複合体形成に有利に働く構造変化だと考えられる。 他のROのコンポーネント間相互作用と比較する研究では、昨年度までにCDOのOxyのアミノ酸置換体16種の発現用ベクターを作成していたため、今年度はタンパク質を用いてコンポーネント間電子伝達速度についてのデータを取得したが、野生型のOxyと比較して活性が上昇するものと下降するものが見られた。また結合部位として予想される2か所のどちらでも同様な傾向が見られたため、結合部位の決定には至っておらず、測定法の改良を行っている。
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