研究課題/領域番号 |
15J11001
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
室崎 裕一 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ワイドレンジ荷重センサ |
研究実績の概要 |
本年度は,以下の4項目について研究を実施した. 1.センサの耐荷重向上による計測レンジの拡大:水晶振動子のその薄型の構造は曲げや座屈による破壊が起こりやすくセンサの耐荷重を担保することが難しくなる.水晶振動子の両面にバルクの保持層を接合することで,座屈を防ぎ,センサの強度を向上させる構造を提案した.センサの強度設計を行うために,センサに対して鉛直方向から10 Nの荷重負荷した際の,水晶振動子部におけるフォンミーゼス応力の解析を行った.解析結果より,10 Nの負荷時に水晶に加わる応は4.6 MPaとなり,水晶振動子の破壊強度150 MPaより算出される理論上のセンサへの許容荷重は 320 Nとなった.製作したセンサの評価を行った結果,製作したセンサは,3 mNの分解能で300 Nまで計測可能であり,10の5乗レンジを有することが確認できた.座屈を防止するセンサ構造のため,300 N以上の強度を示す可能性がある. 2.差動法を用いたセンサの温度補償:製作したセンサ二つを回路基板上に搭載し,一方を温度リファレンス用のセンサとして用い,差分をとることで,温度変動を低減可能であることを確認した. 3.ミキシングを用いたセンシングシステムの小型化:ミキシング回路を用いることで,計測周波数が100 kHz以内に低減されたことで,汎用マイコンを用いた小型周波数による100 Hzのサンプリング周波数,1 Hz以内の計測精度が可能となった. 4.製作したセンサを用いたマルチ生体信号計測:本センシングシステムの有用性を検証するために,センサをベッドの背中部に設置し,生体信号の計測を行った.実験の結果,脈拍を測定可能な分解能を有することを確認できた.製作を行った水晶荷重センシングシステムを用いることで,寝転がる動作,呼吸・脈による荷重変動の同時計測が可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度において,下記の取り組みを行った. 1)水晶振動子を用いた荷重センサ(水晶振動式荷重センサ)の計測レンジ拡大のためのセンサ構造の提案およびセンサの作製・評価 2)水晶振動式荷重センサの計測システムの小型化 3)水晶振動式荷重センサを用いた生体信号計測による有用性の確認 また,以上の内容に関して学会発表4件,受賞2件という成果を得ている.上記内容は,水晶振動子を用いた超小型・超ワイドレンジ荷重センシングシステムの構築という目的に対して,期待通りの進展があったと言える.
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今後の研究の推進方策 |
座屈を防ぐセンサ構造の提案により,センサの計測レンジを拡大可能なことを確認できたため,今後は10の7乗レンジを有する荷重センサの実現のため,センサの接合状態の改善やセンサ出力の安定性の改善を行っていく.また,計測レンジを拡大したセンサを用いた応用として,体重や歩容を含めた生体信号計測やロボットへの搭載を実現させ,センサの有用性を確認する.
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