外生殖器性差構築とアンドロゲンの作用は古くから研究の対象とされてきたが、外生殖器においてはアンドロゲン受容体シグナルの標的遺伝子は同定されていなかった。本研究は、これまで未解明であったマウス外生殖器におけるホルモン依存的性差構築機構を分子レベルで解明することを目的としている。 外生殖器における性差構築機構の分子基盤の全容を明らかにする為に、次世代シークエンサーを用いたChIP-seq解析を行った。本年度はE16.5の雌雄外生殖器を材料とし、抗ヒストン抗体を用いたChIP-seq解析を行った。この解析によりMafb遺伝子制御に関しては、昨年度報告したUTR上に存在するエンハンサーに加えて、外生殖器特異的な新規エンハンサーの存在が明らかになった。また、Mafb遺伝子の発現を正に制御する新規制御因子を同定した。更に、Mafb遺伝子以外の新規アンドロゲン標的因子、性差制御遺伝子が複数明らかになった。候補の中には転写因子があり、興味深い事に一部の癌細胞においても機能している事が従来報告されている。従って発生医学と癌細胞増殖制御をリンクする可能性が出てきている。これらの解析は発生医学、内分泌学、遺伝子制御学を横断する学際研究として、突出した成果が期待される。 またマウス外生殖器におけるホルモン依存的性差構築機構を明らかにするために、外生殖器の器官培養系を確立した。またこの系は遺伝子導入も可能であり、既に先行実験を行っている。この系を用いることで、より詳細にかつ迅速に、外生殖器における遺伝子の機能解析や転写制御領域を含むコンストラクトを導入した発現制御解析することが可能となった。今後の更なる解析と合わせ、本研究はこれまで未解明であったマウス外生殖器におけるホルモン依存的性差構築機構の分子メカニズムの解明につながると考えられる。
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