研究実績の概要 |
Ag(111)基板上に吸着した1,3,5-トリチア-2,4,6-トリアザペンタレニル(TTTA)薄膜の走査型トンネル顕微測定のデータ解析を進めた。高温相の構造では基板に対してTTTA分子がface-onで吸着していることが分かった。低温相の構造については、顕微測定を行うに至っていないため、今後の課題である。また、多層膜試料では、非秩序部分も含め、複数の構造が入り乱れていることが分かったため、各構造を作り分けるための試料作成条件の検討を今後行っていく必要がある。ラジカルと磁性基板との磁気相互作用について検討するため、Cr基板上とFe薄膜上にTTTAを吸着させた試料についてスピン偏極顕微測定およびX線磁気円二色性(XMCD)測定を行ってきた。Cr基板上へ吸着したTTTAの顕微測定では、分子に相当するサイズの輝点が基板テラス上に確認できたが、スピン偏極測定により十分なデータを得るまでは至らなかった。X線による磁気特性の評価に関して、強磁性薄膜上に吸着したTTTAのXMCDスペクトルの解析を進めたが、窒素のK吸収端でのXMCDシグナルをノイズと分離して取り出すことができなかった。そのため、S/N比を向上させた条件で再度検討を行う必要がある。一方、ポルフィラジン類縁体の試料については、テンプレート分子上に薄膜を作成することで分子面が基板に対して平行なface-on構造の薄膜が得られ、アモルファス構造の薄膜試料に比べ、分子間の反強磁性相互作用が約8倍強くなることが明らかとなった。
|