研究課題/領域番号 |
15J11137
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 真吾 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | 共鳴磁気光学効果 / 自由電子レーザー / 高次高調波 / 希薄磁性トポロジカル絶縁体 / 垂直磁気異方性 / 磁性超薄膜 |
研究実績の概要 |
フェムト秒領域の超高速スピンダイナミクスは、基礎・応用両面から近年注目を集めている。基礎的には超高速領域における非平衡下での動的スピン物性の観点から、応用的には、超高速・高密度化したデバイス開発の可能性の観点から興味が持たれている。しかし、この時間領域で高強度レーザー照射によって引き起こされる現象、特に消磁・減磁・磁化反転に関してまだ解明されていないことが多いのが現状である。 本年度では、この超高速スピンダイナミクス研究のための超短パルス光源を用いた新手法開発と、多元磁性化合物の静的な磁気特性に関する研究を行った。手法開発について、近年登場した大強度、超短パルス性、コヒーレンスを特徴とする極端紫外領域の自由電子レーザーを光源とし、共鳴磁気光学効果をプローブとした超高速磁化反転現象を観測した論文を発表した。また同じく極端紫外域の超短パルス光源である高次高調波レーザーを用いた共鳴磁気光学効果の測定システムの立ち上げを行い、定常状態に関しては開発が完了し、現在はその時間分解測定への拡張を行っている段階まで達した。一方、多元磁性化合物に関する研究では、垂直磁気異方性が界面のスピン軌道相互作用で増大されることで注目を集めている磁性多層膜MgO/Fe/Au系に注目した。この系は、スピントロニクス分野のデバイス開発の観点からも重要である。実際に成膜を行い、磁気モーメント、垂直磁気異方性に関する測定を行い、その系において界面の影響が強く現れていることが示唆された。また、近年量子異常ホール効果が観測され注目を集める希薄磁性トポロジカル絶縁体の中でもVドープの希薄磁性絶縁体について、その静的な強磁性相の観測に成功した。今後は、これまで開発してきた新手法を、静的な磁気的性質の理解が深まってきた磁性多層膜、希薄磁性トポロジカル絶縁体に適用し、そのスピンの動的特性を明らかにしていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新手法開発に関しては自由電子レーザーに対しては完了し、高次高調波レーザーについては時間分解測定の要素技術の確立段階まできて、その対象に関する磁気特性については、静的振舞の理解が深まり、時間分解をする前段階まで達したため。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までに開発してきた共鳴磁気光学効果の超短パルスレーザーを用いた時間分解を磁性多層膜と希薄磁性トポロジカル絶縁体に適用することでそのスピンの動的特性を明らかにする。磁性多層膜の系は、界面由来のスピン軌道相互作用の寄与が大きい系である。この相互作用が強磁性超薄膜の動的スピン特性に与える影響を調べ、この効果を取り入れたスピンダイナミクスを記述するモデルの構築に取り組む。また希薄磁性トポロジカル絶縁体の系に対しては、これまでの先行研究で強磁性発現機構が現在まだわかっていない。母物質が3次元トポロジカル絶縁体でバルクは絶縁体であるため、従来希薄磁性半導体で見られていたようなRKKY相互作用とは異なる強磁性発現機構であることが考えられる。現在は、この系に対してクラスター計算を行っている。この局在した強磁性原子のスピンの振舞にも興味が持たれているため、自由電子レーザー、高次高調波レーザーといった超短パルスレーザーを用いてその時間特性をフェムト秒領域で追跡する。
|