研究課題
IV族三元混晶SiSnCは、Sn組成10%以上およびC組成6%以上において、バンドギャップが1.4 eVとなることが予測され、新規太陽電池材料として期待できる。また、混晶組成制御によってバンドギャップおよび格子定数を独立に制御できることから、多接合型太陽電池への応用も期待される。一方、Si中へのSnおよびCの平衡固溶限は0.1%以下と非常に低く、特にSiCにおいては、最大でもC組成3%の報告に留まっている。近年、理論計算により、Si中におけるSn-C結合の安定性が報告されている。また、実験的には、SiSn中へのCイオン中によるSn析出の抑制やSn-C結合の安定性が報告されている。しかし、SiSnCのエピタキシャル成長に関する報告は非常に少ない。本研究では、SiSnC層のエピタキシャル成長を検証し、SnおよびCが混晶薄膜の結晶性に与える影響を評価した。SiSnC三元混晶のSi基板上へのエピタキシャル成長を行い、そのSnおよびC導入が薄膜の結晶性に与える影響を調べた。Sn導入によりSiCの結晶化温度を低減できることを実証した。また、Sn導入により反射高速電子線回折の結果から積層欠陥由来の回折パターンが消失し、結晶性が向上することを明らかにした。また、平面構造の観察から、C導入量増加に伴い、SiSnC層の表面での析出物が低減し、Sn析出の抑制効果が得られることを明らかにした。5.1%のSn導入によって、平衡固溶限を超える2.5%の格子置換位置C組成を実現した。また、分光エリプソメトリーの評価から、C組成増大に伴うE1の遷移エネルギーの増加を確認し、エネルギーバンドギャップの拡張を示唆する結果を得た。IV族半導体・接合型太陽電池に向けて、格子整合系・高C組成SiSnC薄膜によるエネルギーバンド構造制御の可能性を見出した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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