研究課題/領域番号 |
15J11213
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安藤 祐一郎 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 不斉合成 / 有機触媒 |
研究実績の概要 |
代表者は、これまでに過酸化水素を酸化剤とするカルボニル化合物の不斉α-ヒドロキシル化反応の開発に成功している。本反応では、添加剤としてトリクロロアセトニトリルを加えることで、効率的に反応が進行する。トリクロロアセトニトリルは過酸化水素と反応し、過イミド酸を生成することが報告されており、この過イミド酸のイミド酸基が優れた脱離能を有するため、末端のヒドロキシル基への求核攻撃が円滑に進行すると考えられる。この中間体に注目し、過酸化水素の代わりにヒドロキシルアミンを用いることで、不斉α-アミノ化反応の実現を目指した。 求核剤として、3-位に一つの置換基を有するオキシインドールを基質とし、代表者が所属する研究室で開発された光学活性1,2,3-トリアゾリウム塩を触媒として、塩基性条件でヒドロキシルアミンとトリクロロアセトニトリルを作用させたところ、目的のアミノ化生成物が得られた。その上で、触媒構造の検討を行うことで、高効率かつ高立体選択的な不斉α-アミノ化反応の実現に成功した。また、窒素上に、様々な置換様式・官能基を有するヒドロキシルアミンを基質として用いても同様に反応は進行し、本手法が広範な基質に適用可能であることを確認した。分子内反応に適用することで、天然物の主骨格として偏在するスピロオキシンドール誘導体の不斉合成にも成功した。更に、ヒドロキシルアミンとトリクロロアセトニトリルから反応中間体であると想定されるイミド酸誘導体の単離にも成功した。単離した誘導体を用いて反応を試みたところ、同様にアミノ化生成物が得られたことから、イミド酸誘導体が実際に中間体として働いていることが分かった。今回得られた知見から、安価かつ入手容易な試剤を用いた直接的不斉α-ヘテロ化反応の化学の新たな可能性が拓かれると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果であるカルボニル化合物のα-ヒドロキシル化反応を応用し、ヒドロキシルアミンとトリクロロアセトニトリルから生成するイミド酸誘導体を新たな求電子的窒素化剤として利用することで不斉α-アミノ化反応を実現することに成功した。また、反応条件と触媒構造を詳細に検討することで、高い立体選択性で目的のα-アミノ化体を得られる条件を見出した。窒素上に様々な置換様式・官能基を有するヒドロキシルアミンを基質として検討を行い、本反応が多彩なN-無保護アミノ基をカルボニルのα-位に直接的に導入できることを明示している。この結果より、今年度の研究計画のひとつであるヒドロキシルアミンをアミノ源とするカルボニル化合物の不斉α-アミノ化反応の開発を完遂した。
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今後の研究の推進方策 |
トリクロロアセトニトリルを利用した活性化法の知見を活かし、有機ヒドロペルオキシドの活性化による不斉α-エーテル化や、スルフェン酸を用いた不斉α-チオエーテル化反応などへの展開していく。 同時に、分子内にアニオン部位を有する炭素ラジカルの自在発生法及び、キラルカチオンによる立体制御に基づく新規触媒的不斉炭素-炭素結合形成反応の開発に着手する。始めに無置換アジリジンを用いたサイクリックボルタメトリーによる酸化還元電位の測定を行う。これにより得た結果をふまえて、種々の一電子レドックス触媒を用いることでアジリジンのホモリティック開裂による炭素ラジカル活性種の発生法の確立に取り組む。
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