今後の研究の推進方策 |
今後はさらなる有用化合物への誘導の検討と高次選択性を制御する他の反応への応用の検討を行っていく。まず、さらなる有用化合物への誘導の検討としてStreptomyces griseusがStreptmycinを生合成する際の自己調節因子として働くA-factorに着目した。これまでに、γ-位にベンジロキシ基を有する基質に対してキラルリチウム(I)ホスホリルフェノキシド触媒を用いたエナンチオ選択的共役シアノ反応を行い、目的生成物を73%収率、97%eeで得ている。その後、得られた生成物に対して三臭化ホウ素によるベンジル基の脱保護および酸性条件下で環化を行い、最後にキラルラクトンのシアノ基を塩酸で加水分解することで、A-factorの合成鍵中間体である(S)-paraconic acidを得ることに成功している。しかし、誘導での収率の改善が必要であるため、今後最終ステップの酸加水分解の条件検討や別のルートでの誘導の検討を行っていく。次に、高次選択性を制御する他の反応への応用の検討としてα,β,γ,δ-不飽和カルボニル化合物の位置及びエナンチオ選択的共役シアノ化反応の検討を行っていく。これまでに位置及びエナンチオ選択的な共役シアノ化反応の開発例は無く、非常にチャレンジングな研究テーマである。これまで用いて来たキラルリチウム(I)ホスホリルフェノキシド触媒では、1,4付加生成物しか得ることができず、目的の1,6付加生成物が得られなかった。さらなる検討の結果、現在までに新規キラルマグネシウム(II)ホスホリルビナフトキシド触媒を用いることで、1,6付加生成物を57% eeで得ており、今後さらなる位置及びエナンチオ選択性の向上を目指し触媒や反応条件の検討を行うと同時に、得られた生成物からの有用化合物への変換についても検討していく予定である。
|