研究実績の概要 |
薬剤が持つオフターゲットの同定は、創薬研究において副作用の少ない薬剤の設計や、既存薬の別疾患への適応拡大を可能にする。本研究では、タンパク質立体構造情報および相互作用情報から、計算機を用いた薬剤オフターゲット予測システムを開発することを目的とする。そこで、平成28年度は、下記に挙げる項目の実現を進めてきた。それぞれ、(1)カーネル法による予測手法の開発、(2)統計モデルによる予測手法の開発、である。 (1)カーネル法による予測手法の開発に関する研究成果 研究成果として、①emWNNGIP、②cmvWNNGIPという2つ予測手法を開発した。emWNNGIPは、WNN-GIP(Laarhoven et al., 2013)に対して、カルバック・ライブラー・ダイバージェンスを用いたカーネル補完を行う手法である。一方、cmvWNNGIPは、WNN-GIPに対してカーネル拡張(Belanche et al., 2014)を行う手法である。さらに、従来手法では計算量が指数時間であるのに対し、多項式時間で計算できるアルゴリズムも開発した。 (2)統計モデルによる予測手法の開発に関する研究成果 研究成果として、③EMLMF、④GBFRM、⑤MBFRMという3つの予測手法を開発した。EMLMFは、NRLMF(Liu et al., 2016)に対して、テストデータを欠損値として扱い、EMアルゴリズムを用いて予測する手法である。また、ベイズ最適化手法であるGP-MI(Contal et al., 2014)を用いることで、ハイパーパラメータ探索を効率化する改良も行った。GBFRMは、他分野の予測手法DLFRM(Chen et al., 2016)を本研究分野に応用した手法である。一方、MBFRMはGBFRMの計算時間を短縮するためにギブスサンプリングするところをMAP推定で置き換えた手法である。
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