研究課題/領域番号 |
15J11313
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
斎藤 遼太郎 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 視覚探索 / キャンセレーションタスク / 知的障害 / 言語化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、知的障害児・者の視覚探索機能について、基礎的視覚機能と視覚走査機能の観点からの検討・解明、そして、それらを融合された教育的指導・支援方法の開発・検討である。 今年度は、視覚探索に対する言語化の影響及び視知覚認知の影響について、3歳から12歳の定型発達児及び知的障害児・者において検討した。課題は、1種の刺激を探索するキャンセレーションタスクを用いた。条件として、①何も発生せずに探索する条件(無声条件)、②探索する刺激の名称を呼名しながら探索する条件(発声条件)、③探索する刺激ではないものの名称を呼名しながら探索する条件(干渉条件)の3つを行った。またそれ以外に、視知覚認知、言語性認知、視空間性認知を測定し、個人内能力との関連についても検討を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。まず、定型発達児では、3歳から6歳では条件間の差が見られなかった。一方で7歳以降は発声条件のみ無声条件と干渉条件よりも有意に探索効率が高かった。このことより7歳以降では、探索刺激を言語化することでの探索効率を向上させることが出来ることが示唆された。一方で無声条件と干渉条件の間にはどの年齢群においても差が見られなかった。次に知的障害児・者については、全ての条件間で差が見られなかった。ここから、知的障害者においては、言語化することで探索の向上性を促すことは出来なかった。この結果は、知的障害者は視覚探索の際に、言語的探索をするのではなく、形を覚えて探索する視空間的探索を行っている可能性があるというものの一面を支持するものである。こうした結果は、定型発達児及び知的障害者の視覚的探索場面において、どのような教育的指導・支援方法を構築すべきなのかということの基礎的な面を提供しており、意義深い結果であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、視覚探索機能を測定する課題を独自に作成して検討を行った。その結果、定型発達児・者を対象とした検討から重要な知見を得ることができた。また、知的障害児・者についても、探索方略の1つの可能性を導き出すことが出来た。また、この1年間で査読付きの英語論文を2本、紀要論文を1本を発表した。以上のことより、今年度の進捗状況は、概ね計画通りであると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、今年度に収集した知的障害児・者のデータを詳細に分析することで、次年度以降の研究に繋がる視点を提供していきたいと考えている。具体的には、もう1つの記憶・探索方略として考えらえれる視空間的な面について、視覚機能との関連を図りながら検討を進めていく予定である。
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