研究課題/領域番号 |
15J11371
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
佐々木 貴広 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1) (00835168)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / LPV制御理論 / CMG / ゲインスケジュールド制御 |
研究実績の概要 |
近年,小型衛星の開発が盛んに行われてきている.しかし小型衛星は,様々な問題点を抱えている.そこで本研究では,制御面と姿勢制御アクチュエータのハード面の双方から,これらの問題点に取り組むものである. 制御面では,LPV制御理論を小型衛星の姿勢制御に近似誤差のない形で適用する方法を考案し,パワー最適制御等の機能を付加することを研究目的とする.これにより,小型衛星の高速姿勢制御および電力の削減にシステム面からの改善が期待できる.これらは,小型衛星のミッション幅の拡大および電力不足の解消に繋がる. ハード面では,新しいタイプの姿勢制御アクチュエータであるDGVSCMGの設計・開発,エアテーブルを用いた実機実験,小型衛星への搭載を研究目的とする.これにより,小型衛星の姿勢制御アクチュエータにおける衛星内のスペースおよび重量の削減に繋がる.これらは,小型衛星において,スペースと重量の制約を緩和するものである. 今年度は,学会発表5回 (うち3回が国際学会での発表),学術論文誌への投稿4本(うち2本が掲載,残り2本は現在査読中)と活発的に研究に取り組み,米国航空宇宙学会(AIAA)主催の国際会議 SciTech 2016の誘導航法制御部門 (Guidance, Navigation, and Control Conference)では,2016 AIAA GNC Graduate Student Paper CompetitionのFinalistを受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は主に以下の3つの研究を行った.1つ目は,より実装を意識した姿勢制御シミュレーションの作成を行った.具体的には,宇宙機の受ける外乱の影響をシミュレーションに実装,アクチュエータの入力飽和をシミュレーションに実装,宇宙機の慣性モーメントの妥当性についての検討を行った. 2つ目は宇宙機アクチュエータの冗長系に関する研究を行った.宇宙空間での故障修復は困難なため,宇宙機のアクチュエータを冗長に搭載するのが一般的となっている.その冗長系 (3軸姿勢制御を行う際に余った自由度)を利用した研究が近年広く行われており,DGVSCMGという新しいアクチュエータを用いた冗長系の研究を実施した.また駆動則における特異点回避に関する研究にも着手した. 3つ目は,DGVSCMGの実機実験を行うため,CMGの開発経験のあるJAXA (宇宙航空研究開発機構)および首都大学東京の小島研究室を訪問し,設計方法およびそのノウハウを学んだ.そして,小野電機製作所の協力の元,DGVSCMGに設計を完了した. 本来予定していたパワー最適制御やパワートラッキングといった冗長系の研究に加え,各アクチュエータの特異点回避に関する研究にも着手し,DGVSCMGの設計・開発準備に取り掛かるなど期待以上の研究の進展があった.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策として,制御面およびハード面について以下で述べる. 制御面では,LPV制御理論の宇宙機への適用方法を確立する.変数の多さから宇宙機の姿勢制御への適用が困難であるLPV制御理論について,近似を伴った適用法を提案してきた.そこで,近似誤差を含まず,LPV制御理論を宇宙機へ適用する方法について考える.また,制御理論の知見を高めるため海外での研究留学を予定しており,ここでの経験は宇宙工学をリードするアメリカで研究することにより,制御工学の専門性を高めるのみならず,日本とアメリカの宇宙開発に関する考え方およびグローバルな視野を得るといったことにも役立つものである. ハード面では,設備として,エアテーブルを導入し,開発した小型衛星用DGVSCMGと各種センサを用いた姿勢制御実験を行う.また,実験結果とシミュレーションの比較をし,モデリング誤差についての検討を行う.ここでの知見を元に,実装を意識した新たな研究課題を見つけ出し,それを解決するような研究を実施する.
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