研究課題/領域番号 |
15J11385
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
早川 雅之 東京工業大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロゲル粒子 / マイクロ流体工学 / 自己駆動粒子 |
研究実績の概要 |
27年度では、本研究の基盤となる自律型マイクロマシンの開発を行った。このマイクロマシンは、アガロースゲルにより作製され、白金による触媒反応により自発的に駆動する。マイクロゲルの形状、白金の配置をコントロールすることで、方向性のないランダム運動、直線的な並進運動だけでなく、自転、円運動など、多様な運動パターンを制御することに成功した。 これらの成果のうち、プロペラ型、2/3球型、リング型など、様々な形状を有するマイクロゲルの作成方法に関しては、査読ありの学術雑誌、Scientific Reportsに掲載された。今まで、非球形のマイクロゲルを作成する方法は複数報告されていたが、その多くの方法がMEMSなどのマイクロ加工技術を駆使して作製されたマイクロ流路を用いたものであり、莫大な時間、コストが必要であった。しかし掲載された我々の方法では、簡易的な流体デバイスを用いてゲルを作製するため、時間、コストの両方を削減でき、さらにゲル内部に白金などの必要な物質を自由に内包させることが可能であるという長所を持つ。 また、作製された自律型マイクロマシンの運動モデルを構築し、数値シミュレーションを行った。マイクロマシン(マイクロゲル)の形状と白金の配置場所について、マイクロマシンの運動軌跡、回転運動と並進運動の関係性などがシミュレーションを行うことで明らかになった。また、得られたシミュレーション結果は、実際に行った実験結果とよく一致していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自律的に運動を行うマイクロマシンの構築に関しては予定通り実現することができた。また、マイクロマシンの運動パターンモデルに関しても完成しつつある状態である。この成果は、現在論文を執筆しており近日中に査読ありの学術雑誌に投稿予定である。さらに、当初の計画には入っていなかった、より発展的なシミュレーションとして、現在では、白金の触媒反応により生じる酸素のランダム性を考慮したモデルの構築を試みている。当該研究で扱うマイクロマシンでは、酸素の気泡の発生点が白金部分においてもランダム性を含んでいるため、意図しない回転運動が生じてしまうという問題があった。本モデルを構築し、様々な条件でシミュレーションすることでより方向性のある運動を示すマイクロマシンが実現することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に作製された、マイクロマシンを集団系へ拡張し、個々のマイクロマシン同士の相互作用について着目していく。近年、自発的に駆動する個体が、それぞれ相互作用することにより集団として秩序的に振舞うことが数多く報告されている。昨年度、我々は非対称な電極上におけるマイクロ粒子の集団秩序形成が、密度依存的に観察されることを発見した。このマイクロ粒子は、当該研究のマイクロマシンとは異なる原理で駆動するものの、密度依存的に秩序が形成される点は、当該研究に適用できる可能性がある。したがって、このような集団的秩序が、当該研究で扱うマイクロマシンでも観察され、これが物質輸送と物質破壊を切り替えるシステム構築に有用な原理になると考えている。
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備考 |
CBI eBook Series No. 2, 情報計算化学生物学会 (CBI 学会) 出版, (2016/04/15), 224ページ, ISBN 978-4-9903708-9-3 (P209-P210を執筆)
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