研究課題
昨年度の研究では,メタマテリアル中の増強THz近接磁場を用いて弱強磁性体ErFeO3における光誘起スピン再配列相転移過程を制御し,THzを用いたマクロ磁化制御に成功した。最終年度である今年度は,光励起を用いない純粋THz波による巨視的磁化制御の実現を目指し,従来光源を大幅に超えた強力光源の適用に注力した。その結果,主として下記に示す成果を得られた。1.100uJ/pulseに達する世界最高強度のTHz光源である阪大産研の自由電子レーザー光源をErFeO3の単結晶試料に照射しつつ可視光のファラデー効果によって磁区形状を顕微観察したところ,THz照射領域内で強磁性磁区形状が大きく変形することを確認した。この現象の詳細な機構は理論考察中であるが,THz照射による加熱に加えて磁気音響効果によりドメイン壁の伝搬が生じるというモデル等が考えられる。純粋THz波により恒久的なスピン反転を実験的に示したのは初めてと思われる。2.THz波の近接磁場振幅をさらに増強するために,超収束効果を示すことで知られるテーパー型金属導波路を設計・作成した。磁気光学結晶(TGG)基板上に分割リング共振器(SRR)を作成し,THz電場を与えた際の近接磁場による可視光のファラデー回転をプローブとして,近接磁場強度の定量評価を行った。導波路有・無の両者に対してファラデー振幅を比較した結果,導波路を通してSRRを励起した際は2~3倍の磁場増強が得られた。導波路構造の最適化によってこの値はさらに向上が見込まれる。3.この他,米国MITとの共同研究を行い,非線形光学応答を高感度に取得する方法として知られる2次元THz分光法によって,YFeO3におけるサブTHz磁気共鳴の非線形ダイナミクス観測に成功した。また,独Konstanz大との共同研究で,差周波発生を用いた広帯域かつ高電場強度の2次元分光系の開発に着手した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves
巻: 37 ページ: 1199-1212
10.1007/s10762-016-0323-4