研究課題/領域番号 |
15J11533
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
呉羽 拓真 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | ヒドロゲル微粒子 / 複合マテリアル / 分子分離担体 |
研究実績の概要 |
1:低分子存在下のヒドロゲル微粒子の分子分離機能と構造変化の関係解明 標的分子存在下のゲル微粒子の構造評価法が確立でき、本課題の目的である触媒反応時のゲル微粒子の構造と分子拡散性がどのように関係しているのか、その知見を得た。特に、機能団のひとつとして負電荷のアクリル酸が共重合されたpoly(N-isopropyl acrylamide)ゲル微粒子の内部微細構造を小角・広角X線散乱法によって評価した。この時、カチオン性低分子を存在させることで、アクリル酸と静電相互作用を引き起こし、微細構造が変化する。カチオン性染料は多く内包され、続く昇温時には、アクリル酸の電荷で抑制されていたゲル微粒子の相転移を引き起こすことにつながり、疎水性ドメインが形成し、染料の取り込み量は更に増加した。本検討は学術論文として受理された。 2:固体状ポリマー複合ゲル微粒子の合成とその分子分離能の向上 特異的な分子吸着能をもつ難水溶性の固体状ポリマーをゲル微粒子に複合し、機能向上を図った。本課題の機能団には金属等の疎水性固体成分が主となる。これら疎水性の機能団はゲル微粒子内部で反応基質や機能性分子と接触し、吸着および反応が生じるが、反応生成物等の多くの基質が存在する中で効率良く機能団と基質を反応させるためには狙った分子のみが選択的に吸着することが重要になる。この選択的な分子吸着能を向上させるため、本検討では汚水に含まれる汚染物質、または薬剤として機能するハロゲン化合物を標的分子とし、疎水性固体成分に電子供与性が高いメトキシ基を有するポリマーを選択することで、自由自在にハロゲン化合物を吸着・放出可能なキャリアーの創製、応用を試みた。結果として、得た複合ゲル微粒子は、ハロゲン含有色素をハロゲン結合という特異な相互作用により選択的かつ大量に内包し、昇温によるゲルの脱水和と共に放出可能であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
触媒担体となるヒドロゲル微粒子の分子レベルの構造評価は標的分子存在下でも可能であることがわかり、更にリアルな場でのゲル微粒子構造評価法を確立でき、学術論文として認められた点。また、金属ナノ粒子をはじめとする疎水的で分散安定性が低い機能団を水膨潤ゲル微粒子に複合化させる技術の向上が図れ、こちらも学術論文として受理されたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は金属ナノ粒子を複合したゲル微粒子の触媒反応中における構造・物性変化を詳細に評価し、最も触媒活性が高い条件の探索や最終目標である酸化ルテニウムナノ粒子等の機能団を複数有するゲル微粒子触媒を創製する。
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