研究実績の概要 |
本研究では、ホルモン分泌を担う下垂体前葉の機能調節機構を幹細胞という観点から解明することを目標に、下垂体幹細胞ニッチ(微小環境)の制御機構解析を目指す。 具体的には 1.幹細胞ニッチにおけるephrin-B2/Eph Receptorの解析、2.幹細胞ニッチの単離と制御因子の同定、を行う。本年度の研究成果は以下の通りである。
1.下垂体幹細胞におけるephrin-B2/Eph Receptorの解析: これまでに我々は、ephrin-B2が下垂体の幹細胞ニッチに発現していることを見出している。そこで、ephrin-B2のパートナー分子の同定を試みた。結果、ephrin-B2と結合が知られる6種類のEph分子のうち、EphB3が下垂体の幹細胞ニッチに局在することを同定した。さらに、ニッチと隣接する細胞においてEphB2が発現することを見出し、EphB3ならびにEphB2が下垂体幹細胞で発現するephrin-B2と相互作用する可能性が示唆された。また、EphB1, B2, B3, B6-quadrupleノックアウトマウス、ならびにEphB1, B3, B6-tripleノックアウトマウスを用いた解析から、ノックアウトマウスで幹細胞の増殖が低下していることを見出した。
2. 下垂体幹細胞ニッチの単離と制御分子の同定: 下垂体幹細胞ニッチで機能する分子の同定を目的に、ラット下垂体組織からニッチの単離を試みた。コラゲナーゼとトリプシンを用いた方法により、10-20程度の細胞で構成される細胞塊として、下垂体幹細胞ニッチの単離に成功した。また、網羅的な遺伝子発現解析を行うために、単離した幹細胞塊を材料としたSAGE解析用cDNA Libraryの作製に成功した。現在、次世代シークエンサーを用いた網羅的な遺伝発現解析を実施している。
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