研究課題
本研究では、ホルモン分泌を担う下垂体前葉の機能調節機構を幹細胞という観点から解明することを目標に、下垂体幹細胞ニッチ(微小環境)の制御機構解析を目指す。具体的には 1.幹細胞ニッチにおけるephrin-B2/Eph Receptorの解析、2.幹細胞ニッチの単離と制御因子の同定、を行う。本年度の研究成果は以下の通りである。1.下垂体幹細胞におけるephrin-B2/Eph Receptorの解析: ephrin-B2が下垂体の幹細胞ニッチに発現していることに注目し、前年度、パートナー分子の同定に成功した。本年度は本研究結果を原著論文にまとめ、投稿し、現在 Minor Revision中である。2.下垂体幹細胞ニッチの単離と制御分子の同定:下垂体幹細胞ニッチの存在割合は全下垂体前葉細胞の1% 以下と非常に低い。そのため,ニッチの性質、ならびにそこで機能する分子を同定するために、ニッチの単離方法の確立が必須である。前年度,ニッチを単離することに成功しており、本年度は、それら幹細胞ニッチ由来幹・前駆細胞を用いたin vitro分化誘導を行った。結果、Wnt signalingのアゴニストを添加することで,下垂体ホルモン産生細胞への分化誘導が可能であることを見出した。この結果に関して、筆頭著者として原著論文を投稿し,Stem Cell Researchに受理された。また、前年度に引き続き、単離したニッチを用いた網羅的遺伝子発現解析を展開している。前年度に行った発現解析では、cDNA Libraryの作製過程に問題があり、バイアスがかかっていることが判明した。この問題点に関しては、細胞溶解液の検討を行い、解決した。
2: おおむね順調に進展している
2つの主要テーマに関して、論文投稿または受理まで到達した。一方で、単離した幹細胞塊を用いた網羅的遺伝子発現解析では、cDNA Library作製過程に問題が生じていることが確認されたが、実験系の改良により、解決済みである。これらのことから、概ね順調に進展していると判断した。
来年度は、再度解析中の下垂体幹細胞ニッチの網羅的遺伝子発現解析の結果を踏まえ、特に転写因子、受容体、細胞外マトリックス合成酵素、液性因子の遺伝子に焦点を当て、ニッチ制御因子の候補を選抜する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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