これまで大豆イソフラボンは脂肪酸代謝の亢進を促し、体脂肪を低下させる作用が報告されており、代謝疾患に対する予防や治療法に有効な食品であると期待されている。さらに、骨格筋における脂肪の酸化や燃焼にはPPARδやERRαなどの転写因子は重要な役割を果たしており、培養細胞において、大豆イソフラボンのダイゼインはERRαを活性化することが報告されている。これらを踏まえて、本研究では、脂質代謝に重要な役割を果たす臓器の一つである骨格筋をターゲットに、大豆イソフラボンが生体内の脂質代謝にもたらす作用について転写因子に着目して解析し、その生物学的メカニズムを解明することを目的とした。 その結果、ERRαを共発現させたC2C12にダイゼインを添加したところ、ERRα下流の脂質酸化関連遺伝子であるCPT1β、MCAD、PDK4の発現量が濃度依存的に有意に増加した。中でも、ダイゼインによる遺伝子発現量が顕著に増加したPDK4に着目し、ERRαを介したダイゼインの制御メカニズムをルシフェラーゼアッセイにより検討した。その結果、ERRαを強発現させることでPDK4の転写活性の増加が認められ、ダイゼインによって転写活性が有意に増強した。さらに、PDK4の上流にあるERRαの反応領域を欠失させたPDK4プロモーター変異体を作成し、メカニズム検討を行った。その結果、ERRαの反応領域を欠失させることで、ダイゼインのPDK4プロモーター活性増強効果は軽減した。よって、ダイゼインはERRαを介して脂質代謝関連遺伝子であるPDK4の発現を制御していることが示唆された。
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