研究課題
本研究では、被虐待経験のある児童の社会的認知能力、特に他者の利他性を検知する能力が虐待を受けたことのない子どもと比較してどのような特徴を示すかを明らかにし、またオキシトシンの単回投与が改善効果をもたらすかどうかを検討することを目的としている。また、社会認知能力において、被虐待経験のある子どもと類似した困難を示すといわれる自閉スペクトラム症のある子どもとも比較を行い、それぞれの特徴を明らかにすることも目的としている。平成28年度は10~17歳の被虐待経験のある子ども及び自閉スペクトラム症の子どもを対象として、オキシトシンもしくはプラセボを単回投与し、他者の利他性検知課題と他者の魅力度判断課題を遂行する実験を行った。このうち、被虐待経験のある子どもと、27年度中に実験を行った被虐待経験のない定型発達の子どもの他者の他者の利他性検知能力、魅力度判断及びそれらにオキシトシンの単回投与が及ぼす影響について比較検討を行った。この解析の結果について、現在10月に行われる日本児童青年精神医学会に演題投稿中である。また、27年度に行った、被虐待経験のない子どものみを対象とし、オキシトシン単回投与の影響を検討した実験及び解析の結果について、9月にカナダで行われた国際学会The 22nd International Association for Child and Adolescent Psychiatry and Allied Professions World Congress及び、10月に岡山県にて行われた第57回日本児童青年精神医学会総会において口頭での発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
自閉スペクトラム症の子どもの参加者リクルートにおいて、当初の想定以上に男女比の差が大きく、女児の参加者を集めるのに難航した。
本年度はこれまでに採取した生体試料の解析を行い、遺伝子多型による認知的指標の差やオキシトシン投与の影響について検討を行う。また、被虐待経験のある子ども、自閉スペクトラム症のある子ども、被虐待経験のない定型発達の子どもの3群の認知能力及びオキシトシン投与の影響の違いについて明らかにする。これらの結果について本年度中に取りまとめを行い、論文化して投稿し、平成30年3月までの受理を目標とする。
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