本研究では被虐待経験のある児童の社会的認知能力に、オキシトシンの単回投与が改善効果をもたらすかどうかを検討することを目的とした。特に本研究では、他者の利他性を検知する能力に着目して検討を行った。また、社会的認知能力において類似した困難を示すといわれる自閉スペクトラム症(ASD)との認知能力の差異についても明らかにすることを目指した。 平成29年度は10~17歳の被虐待経験のある子ども及び自閉スペクトラム症の子どもを対象として、オキシトシンもしくはプラセボを単回投与し、他者の利他性検知課題と魅力度判断課題を遂行する課題を行い、被虐待経験や自閉スペクトラム症の有無、オキシトシン投与の主効果、及びその交互作用がみられるかを検討した。また、それらにオキシトシン受容体遺伝子多型が影響を与えるか、唾液中OT濃度についての検討も併せて行った。現在、解析の結果について論文を執筆中である。 また、平成28年度中に行った、被虐待経験のない子どもと、被虐待経験のある子どもを対象としてオキシトシン単回投与の影響を検討した実験及び解析の結果について、平成29年10月に奈良県にて行われた第58回日本児童青年精神医学会総会において口頭での発表を行った。
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