本研究は、ナノインプリント法を用いた微細加工と機能性酸化物とを組み合わせることにより、新規な微細構造、またそれに伴う機能性の向上を目指してきた。昨年度までの研究成果により、ポリマーのナノインプリントにおいて、自己組織化により原子ステップパターンが形成される酸化物単結晶サファイア(α-Al2O3)ウエハーを鋳型にすることで、約0.3 nmの原子レベルでの段差を持つ直線的ステップ形状を市販のPMMA(アクリル樹脂)や高耐熱性を有するポリイミドなどの樹脂表面に大面積で転写する技術を開発した。今年度は、原子ステップ形状が転写された透明なポリイミドシートを基板として応用し、パルスレーザー堆積(PLD)法とポストアニールにより、基板表面の平坦性および原子レベルのパターンを維持した良質な結晶化ITO酸化物薄膜の作製にも成功した。また、今年度は酸化物薄膜として薄膜合成中に自己組織的にナノピラー・マトリックス構造を形成するZnO-NiO複合酸化物に取り組んだ。このような自己組織化を利用した酸化物の構造体の作製は、従来のリソグラフィ法では難しいナノメートルオーダの径を有するピラー構造を高密度、大面積で作製することができ、加えて新規な物性、機能性の向上が報告されてきている。本研究対象であるZnO-NiO複合酸化物薄膜に関しては、高密度で微細なNiOナノピラー構造をReRAMといった次世代不揮発性メモリデバイスに応用できることが期待される。しかしながら、ナノ構造体の位置・サイズなどを制御することは難しく、記録素子などのデバイス化やナノスケールでの材料設計において大きな障壁となっていた。 そこで、ナノインプリント法により単結晶基板に人工的なテンプレート溝パターンを作成することによって、薄膜前駆体の核形成・結晶成長を制御し、ライン溝の中央部にNiOナノピラーを配列させることに成功した。
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