研究課題/領域番号 |
15J11772
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
田中 リベカ お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 形式意味論 / 量化表現 / 依存型理論 / 複数照応 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、英語の量化表現・数表現・複数表現について、照応・前提現象との相互作用や推論的性質までを考慮した網羅的な分析を、依存型理論の枠組みにおいて与えることである。自然言語の名詞句の中心部分を担う量化表現・数表現・複数表現に着目し、定理証明器による実装とも相性が良い依存型理論の枠組みで分析を与えることで、含意関係を機械で判定するための理論的基盤を得ることを目指す。 今年度の研究では主に、Tanaka et al. (2014) が与えた依存型理論における量化表現mostの分析の再検討を行った。具体的には、まず量化表現mostの分析を自然に拡張することで依存型理論の枠組みで数表現の分析を与え、得られた量化表現と数表現の分析をもとに、複数表現の分析への拡張の可能性を検討した。この際、特に複数照応の現象に着目した。談話表示理論や動的意味論における複数照応の分析について調査した上で、依存型理論の枠組みで複数照応の分析を与えた。 これにより、Tanaka et al. (2014)が与えた量化表現の分析は、複数照応で観察される代表的な3つの解釈のうち、分配的解釈と代名詞の依存的解釈には自然に適用できる一方で、集団的解釈の分析に課題があることがわかった。また特に代名詞の依存的解釈の分析に、依存型理論が有効であることが確認された。この成果について国外ワークショップで発表・議論を行った。また国外研究会でも発表・議論を行い、英語量化表現研究について理解を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では初年度は量化表現のみに着目し、定理証明器を用いた推論の検証までを行う予定であった。しかし量化表現の分析と数表現・複数表現の分析を統一的に与えるため、計画を変更し、まず複数表現の分析までへの拡張を試みた。これにより、推論の検証は次年度以降に手がけることになったが、現在の分析の有効な点と改善すべき課題が明らかになり、量化表現・数表現・複数表現の分析全体に対しての見通しが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では数表現のみに注目して推論の検証までを行う予定であったが、計画を変更し、まず複数表現について理解を深め、量化表現・数表現の分析を改善することを目指す。引き続き複数表現に関わる現象について範囲を広げて調査を行い、依存型理論の枠組みにおける意味分析に有効な複数表現の形式的扱いについて、比較と検討を行う。その際、複数照応をはじめとする動的な言語現象の説明が可能であるかどうかに加え、推論の計算が可能であるかについても検討を行う。
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