近年のインターネットトラフィックの急増傾向が続くと数十年内に通信に用いられる電力が日本の総発電量に達するとも言われている。大容量通信への需要と消費電力問題に対応するためには、光送受信器の大容量化、少消費電力化が急務であり、種々の光素子を一体集積した光集積回路により解決が見込まれる。このような光集積回路を実現するにあたり、窒素プラズマを用いたウェハの直接接合法を用いたIII-V/Siハイブリッド集積を提案している。これにより、Siのみでは集積が困難であった光源などの能動素子の一体集積が可能となり、自由度の高い光集積回路の実現が期待できる。III-V/Siハイブリッド光集積回路実現へ向け、基本素子となる光源部が重要となる。他研究機関から報告されているハイブリッドレーザは、従来のIII-V族化合物半導体ベースのレーザと比較して、高しきい値電流、低外部微分量子効率となっている。実用的な光回路実現に向け、集積回路向け光源の高効率化と複数デバイスの集積化を目指し、高効率なハイブリッド集積光増幅器およびSi導波路とハイブリッド光集積デバイスとの結合の実現が必要となる。 本研究ではIII-V/SOIハイブリッド集積による波長可変光源の研究に取り組み、以下の研究成果を挙げた。 (1)ハイブリッド集積光増幅器と受光器を作製し、増幅器においては正のデバイス利得を、受光器においては従来のIII-V族化合物半導体材料のものと同等の感度を持つことを確認した。 (2)Si導波路とIII-V/SOIハイブリッド集積デバイス間の光接続構造において、0.1dB程度となる非常に高い結合効率を持つテーパ型モードカプラの実現を達成した。 以上の研究結果から、これらの達成した技術を集約することでSi導波路と一体集積したAlInAs酸化狭窄構造を有する高効率なハイブリッドレーザの実現、波長可変光源とSi導波路の一体集積化、変調器との集積が可能である。
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