研究課題/領域番号 |
15J11776
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
井上 大輔 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 光配線 / 半導体レーザ / 半導体薄膜レーザ / 極低消費電力動作 |
研究実績の概要 |
近年、LSIチップにおける電気配線層は信号遅延や発熱の増大によってチップ全体の性能を律速する要因となっている。そこで既存の銅電気配線の代替となる、新規の配線技術が求められている。本研究では、Ⅲ-Ⅴ族半導体薄膜構造を用いた光配線技術を提案している。薄膜構造がもたらす高い比屈折率差によって極低電力なDFBレーザ光源を高密度に集積した光配線が実現できる。以上の手法によって半導体薄膜光配線がLSIチップ上の銅グローバル配線を代替する新規技術であることを示すことを最終目的としている上述の研究目的に沿って、以下の研究成果を挙げた。 (1) 半導体薄膜DFBレーザにおける高変調効率動作 半導体レーザの電流注入量に対する帯域の上昇の傾きである変調効率を実験的に明らかにした。小信号応答特性から得た緩和振動周波数をプロットした傾きから変調効率11 GHz/mA1/2を得た。これまで報告されたDFBレーザとしては最も高い値であり、薄膜DFBレーザの低電流注入条件下における高い高速性を示した。 (2) 半導体薄膜DFBレーザの10 Gbps直接変調の実現 薄膜DFBレーザを大信号電圧で直接変調し信号伝送実験を行った。平均受信電力-5.8 dBmのときに1×10-9を下回るBERが得られており良好な伝送特性が確認できた。10 Gbps光出力信号のアイパターンより、消光比(Extinction ratio: ER)が5dBで十分な光変調とともにアイ開口を確認した。このことは、薄膜DFBレーザが低しきい値電流動作だけではなく低電流領域での高速動作を実現した成果であり、オンチップ光配線の光源として優れた性能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オンチップ光配線に向けたIII-V半導体薄膜光集積回路として、以下の研究成果を挙げた。 (1) 強屈折率結合構造な薄膜DFBレーザを作製することで注入電流に対する帯域の上昇の傾きである変調効率として11 GHz/mA1/2を実現した。これはDFBレーザとしては世界最高の値であり、薄膜DFBレーザが低電流な領域で優れた高速性を有していることを明らかにした。 (2) 薄膜DFBレーザの直接変調実験を行い、1 mAのバイアス電流を用いてデータレート10 Gbps、NRZ 2 31-1の信号を伝送しビットエラーレート1×10-9以下を達成した。 以上の研究進捗状況から、次年度では薄膜DFBレーザと光検出器を一体集積した薄膜光リンクの作製を行い、チップ上での極低消費電力信号伝送を達成できると見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに薄膜DFBレーザの低バイアス電流での高速性を示すことに成功した。今後は結晶成長法による集積化技術を用いて薄膜DFBレーザとPIN型光検出器を集積化し、光リンク構造における信号伝送特性を明らかにする。課題としてはリンク構造におけるレーザと光検出器の間に適切な電気絶縁性を導入すること、集積構造における特性と個々の素子特性を分離して解析することで適切に信号伝送評価を行うことが必要となる。
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