研究課題/領域番号 |
15J11778
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
張 乾 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 選挙実験の設計 / 選挙モデルの修正 / 学会発表 / 選挙について実地調査 / マッチング理論での研究 / 不完全情報と情報コスト / 新構造経済学の研究 / 政府の非合理性と学習能力 |
研究実績の概要 |
平成27年では、修士論文で議論された選挙制度の違いが個人の選好に与える影響を分析するモデルをさらに修正した上で、実地調査をし、実験で使われるモデルを設計した。これらの結果を踏まえた上で、論文を修正し、投稿する予定。具体的に、参加した学会は、東京大学ミクロ経済学ワークショップ、日本経済学会2015春大会、北京ゲーム理論アルゴリズム研究サマーキャンプ、Econometric Society Summer School、東アジアゲーム理論学会、中国制度経済学年会など。また、不確実性とダイナミックな選挙理論の研究と、政治制度との関連性研究の動向を押さえるために、“A Behavioral Theory of Elections”などを参考し、修士論文段階のモデルを修正していた。また、実験を設計している段階では、神取道宏先生・松島斉先生・川越敏司先生・葉航先生に、モデルや可能な問題・結果などについて相談し、実験の準備をしていた。また、北京大学新構造経済学センターの元で、実地調査を行い、地方産業と政治制度が地方選挙にどのような影響をしているかを分析した。 このほか、新しい課題についても良い成果を獲得していた。マッチング理論の分野で、以前取り扱わなかった不完全情報や情報コストが存在する時のモデルを発展した。従来のマッチング理論では多参加者によるHigh Dimensionalityで両者の耐戦略性を同時に分析することはできなかったが、現在行っている研究は特定の選好関数の導入により、同時に分析することができた。神取先生とDuke UniversityのAtila Abdulkadiroglu先生から高く評価されていた。 また、中国経済と産業政策の研究について、成果を獲得していた。2015年末に北京大学新構造経済学セミナーで発表し、発表内容は学術書の一章として出版されていた。中国経済について、主に政府の非合理性と学習能力、またこの学習能力が産業政策に与える影響をモデル化したのです。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初めて先生から指示されずに、自分の意思でプロジェクトを全てアレンジすること、特に実験の遂行については難しい。色々な問題に遭遇しつつ、自力で解決することを学んだ。研究は概ね順調に進み、多くの学会で発表し、色々な意見やコメントをいただき、自分の研究を認めていた。 予定より遅れている部分ももちろんある。予定していた予備実験の遂行はできず、その原因は主に計画を立てるとき遭遇する問題について認識が足りなかったことや、実験の設計や可能な問題、実際共同研究や実験をするための準備が難しいこと。そこで、より有意義かつ正確な結果を獲得するため、予備実験をせず、実験の目的・設計・問題などを更に深めることに変更した。その結果、2015年9月から、経済実験の経験がある東京大学の神取道宏先生・松島斉先生、実験経済学で著名な川越敏司先生、そして浙江大学の葉航先生に、モデルや可能な問題・結果などについて相談し、可能な問題、例えばプログラムを理解できない問題や、現実を想像させてしまう問題などを回避するため、注意すべきことについて勉強した。 また、これと同時に、予定していない新たな研究も指導教官や他大学の教授に認めていただき、成果を上げていた。前述したように、マッチング理論の分野で新たな問題について研究を進めていた。その結果、この課題について、つまり不完全情報と情報コストが存在する時のマッチングモデル、神取先生とDuke UniversityのAtila Abdulkadiroglu先生から高く評価されていた。更に、中国経済と産業政策の研究も、「産業政策におけるメカニズムデザイン」というテーマで学術書の1章として出版された。 上述のように、予定より遅れている部分があると同時に、予定していないさらなる研究も進めていた。計画の立て方や実験の仕方など経験を積み、今後より効率的に研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、主に三つの方向で研究を続けるつもりです。 主とするのは修士論文、「不完全情報と確率的選挙に基づく世代重複モデルによる選好の進化」、に基づく理論展開と実験実証です。前述した通り、理論モデルはすでにいろいろな意見やコメントにより修正された。また、実験の設計の主なる設計も終わり、次は実験の執行に着手するつもりです。今年までに構築したモデルを基に、国際的な学術雑誌に投稿するレベルで必要な経済学実験を行う予定。また、浙江大学の葉航研究チームと九州大学の横尾研究室では、人間の最適反応を実際計算するコンピューターアルゴリズムの研究が行っており、できればどちらかの研究室と連携し、選挙ゲームでの最適反応の理論計算を行う予定も計上した。経済実験では、80~100人の被験が必要と予定する。 次に、「不完全情報下のマッチング理論」の分野での研究を進める。この課題は比較的に新しい分野であり、参考できる先行研究は少ないが、現在ではすでにモデルの一般化をしてた。結論としている耐戦略性の存在性は証明できるが、具体的に求める時に主に使う数理方法は関数解析のため、関数解析についてさらなる勉強が必要です。また、Atila Abdulkadiroglu先生やスタンフォードの小島武仁先生に連絡を取り、研究について相談する。 最後に、産業政策と政府行為の研究について、北京大学の新構造経済学センターの先生と共同研究をし、さらなる成果を求める。現段階では2016年8月に行われるSummer Schoolで発表する予定。
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