古原生代以前の古地球磁場強度はより新しい時代と比較してわずかしか報告されておらず、地球史を通した変遷を議論することはできないのが現状である。その理由の一つは、時代が古くなるにつれ岩石が変成・変質を受けている割合が高くなり、古地磁気測定に適した試料の入手が困難になるためである。そこで本研究では古原生代以前の古地磁気強度データを増やすため、花崗岩中のジルコンを用いた古地磁気強度復元を行う。ジルコンは磁性鉱物を包有物として含む場合があり、近年古地磁気研究に用いられている。 ジルコン一粒の微弱な残留磁化の測定には超電導量子干渉計(SQUID)が用いられる。本研究では、特性の異なる2種類のSQUID装置を使用し、大量のジルコンの古地磁気強度測定を効率よく行うことを目指す。カリフォルニア工科大学設置のSQUID顕微鏡は試料とセンサーの距離が近く、検出限界が低い。一方、高知コアセンター設置のSQUID磁力計では、ジルコンの磁化を迅速に測定する手法が確立されている。 本年度は主に花崗岩試料の準備・予察的な磁気測定を行った。試料は、全岩の保持する古地磁気・岩石磁気情報が既知である花崗岩(福島県阿武隈山地、1億年前)を用いた。まず、花崗岩試料を砕いて非磁気的にジルコン単結晶の分離を行った。2015年11月にマサチューセッツ工科大学にてSQUID顕微鏡用の試料ホルダーを作成し、2016年1月にカリフォルニア工科大学にてSQUID顕微鏡を用いた自然残留磁化測定を行った。しかし、測定できたサンプル数が少なく、消磁による古地磁気強度測定が可能なサンプルはなかった。2016年2月に高知コアセンターにてSQUID磁力計を用いた測定を行い、ノイズレベルよりも有意に強い自然残留磁化をもつサンプルを選別した。2016年度にこれらのサンプルの古地磁気強度測定及び種々の岩石磁気測定を行う予定である。
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