研究実績の概要 |
長周期の地球磁場変動は地球深部ダイナミクスと深い関わりがあると考えられている。地球史を通した磁場強度変動を明らかにするためには、花崗岩から分離した鉱物単結晶を試料として使用するのが適している。花崗岩は様々な固化年代をもつ岩体が存在し、冷却時間が長く地球磁場の短周期の変動を平均化して記録していることが期待される。また、風化・変質の影響や粗粒な磁性鉱物の存在による測定の困難さを回避できる場合があることから、鉱物単結晶を用いた古地磁気研究が行われている(e.g. Tarduno et al., 2007; Usui et al., 2015; Sato et al., 2015)。しかし、花崗岩から分離した鉱物単結晶の古地磁気強度をその母岩と比較した研究はなく、従来のバルク試料を用いた測定と同様に扱うことが可能かどうかは検証されていなかった。 本研究では、鉱物単結晶を用いた古地磁気強度測定の信頼性を評価するため、全岩の古地磁気・岩石磁気情報が既知である花崗岩試料(福島県入遠野、100 Ma)から分離したジルコン、石英、斜長石に対し岩石磁気及び古地磁気強度測定を行った。前年度までの研究で斜長石がもっとも古地磁気強度測定に適していることが分かったため、今年度は斜長石単結晶17粒の古地磁気強度測定を行い、うち9試料から古地磁気強度を得た。平均値は全岩の値と整合的であったが、試料ごとのばらつきはやや大きかった。これは磁気異方性によるものと推定される。そこで、非履歴性残留磁化を用いた異方性テンソルの推定を行い、古地磁気強度への影響を見積もった。その結果、本研究の条件では9試料の結果を平均することによって異方性の影響はキャンセルされることがわかった。以上のことから、ひとつの花崗岩試料から分離した10数粒の斜長石単結晶の測定を行うことで、全岩試料と同等の古地磁気強度情報を得られることがわかった。
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