研究課題/領域番号 |
15J11845
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
濱 維志 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 感温磁性体 / 電磁 / アクチュエータ / 制御 / 設計 |
研究実績の概要 |
本研究は,小型で大きな定常推力を得るために永久磁石と感温磁性体の組み合わせに着目している.本年度は,その長所を活かした鉛直運動メカニズムを実現するため,上述の組み合わせと電磁駆動要素を融合したハイブリッドアクチュエータの製作に注力した.昨年度決定した設計定数をもとに,本年度は部品を設計・製作しアクチュエータを試作した. 試作したアクチュエータの推力特性,運動特性,消費電力を重要な評価項目と捉え,性能評価を行った.感温磁性体の温度増加に伴い発生するバイアス力は解析値に比べ低下したものの,バイアス力の発生と,電流通電時にこれに重畳して発生する電磁力が確認され,1個のコイルへの通電により,バイアス力と電磁力の両方を連動して駆動できる基本特性を確認した.感温磁性体最低温度50℃の状態に対し,最高温度145℃の状態では,35.6Nの力変化が得られた.各温度においてバイアス力は変位に対してほぼ一定となり,定荷重特性が確認された.また,リニアエンコーダによる可動子変位情報を用いた単純な位置決め制御系を構築して目標変位を与えることにより,搭載荷重の増加に対して自動的にバイアス力が増加し,搭載荷重に釣り合う合力を発生したままバイアス力と電磁力の配分が自動的に決定されることを確認した.定常状態に至った後は,目標変位の変化に合わせて可動子を自由に追従でき,サブミクロンオーダの位置決めが実現された.一方で,36.1N発生時の定常消費電力が18.8Wとなり,消費電力が大きさが問題となった. 今後,消費電力の低減が重要な課題となる.定常時の消費電力は感温磁性体表面からの熱の散逸で決定されるため,断熱ガスの封入や真空封止により定常消費電力の低減を図る予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感温磁性体・電磁ハイブリッドアクチュエータを設計・製作し,性能を評価した.想定通りの基本特性が得られ,荷重搭載の有無にかかわらず運動の生成が確認された.一方で,発生推力に対して消費電力が大きくなる問題が生じた.本アクチュエータは大きな定常推力を効率的に発生することを目的としているため,消費電力は性能上重要な指標である.そのため,断熱ガスの使用や真空封止などにより,消費電力の低減が必要となっている.
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今後の研究の推進方策 |
提案アクチュエータは,荷重搭載状態で使用できる,鉛直制振メカニズムへの応用が期待される.そのため,制振制御系を構成し,固定子側に振動を与えた場合に可動子側を制振し性能を評価する実験が必要となる.制御系には構成が単純なスカイフック制御系を使用する予定である.制振を行いながら,搭載物の高さを自由に調節することのできる高機能な鉛直運動メカニズムの実現を目的とする. また,省エネ化を図るため,定常時の消費電力の低減を図る.感温磁性体表面からの熱の散逸を低減するために,断熱ガスの封入や真空封止を行う予定である.
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