研究実績の概要 |
オートファジーは栄養飢餓などで誘導される、細胞内成分の大規模な分解システムである。オートファゴソームと呼ばれる膜胞が分解対象を包み込み、リソソームあるいは液胞と融合することで内容物が分解される。オートファジーは、オルガネラなどの特定の細胞内成分に対しては選択的な分解を担う。オートファジーを介した小胞体(ER)の分解機構(ERファジー)の存在が示唆されていたが、その詳細は不明であった。これまでに私は、出芽酵母を用いて、ERをオートファジーによる分解へと導く2つのレセプタータンパク質Atg39およびAtg40を同定していた。Atg39は核周囲のER、Atg40は主に細胞質や細胞膜直下のERに存在する膜タンパク質であり、オートファゴソーム膜上のAtg8との相互作用を介して、それぞれが局在するER領域をオートファゴソームに積み込む。さらに、Atg39は核周囲のERを、核内の成分を含む二重膜小胞として分解すること、すなわち、オートファジーを介して核の一部を選択的に分解する機構(ヌクレオファジー)の存在を明らかにした。Atg39の欠失株は窒素飢餓条件において、異常な形態の核が観察され、野生株より早く生存率が低下することから、核周囲のERあるいは核の分解が、飢餓時の細胞の生存に重要な役割を果たすことが示唆された。これらの研究成果はNature誌に掲載された。さらに、Atg39, Atg40のER膜上でのトポロジーを決定し、両者が細胞質ドメインでAtg8と相互作用することなどを示した。また、Atg39およびAtg40が、栄養飢餓やオートファゴソーム形成に依存してER上で集積し、ERと核のオートファゴソームへの積み込みを駆動することを明らかにした。これらの結果は、オートファゴソームの形成と共役して、ER断片や核由来の小胞の形成が起こる可能性を示唆している。
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