研究課題
グラフェンはわずか炭素原子一層からなる究極のナノ材料であり、優れた電子・光特性を有することから、次世代の光電子デバイス材料として有望視されている。我々はこれまでデバイス動作の基礎となるグラフェンの光応答の研究を行い、フェムト秒(千兆分の一秒)という極めて短い時間スケールでの超高速キャリアダイナミクスを明らかにした。本年度はその延長として、グラフェンと半導体の接合系での電荷移動ダイナミクスの追跡を行い、フェムト秒からマイクロ秒(百万分の一秒)に渡る包括的なキャリアダイナミクス研究を試みた。SiC(シリコンカーバイド)熱分解法はSiCの加熱というシンプルなプロセスで大面積・高品質なグラフェンシートを作成できることから、工業利用に適した手法である。グラフェンの成長基板となるSiCの最表面には、Siで終端されたSi面とCで終端されたC面の二種類が存在し、それぞれで異なった界面状態を持つグラフェンが得られることが知られている。そこで我々はSi終端面上グラフェン(Si面グラフェン)とC終端面上グラフェン(C面グラフェン)のキャリアダイナミクスを調べ、その時間構造および界面状態がダイナミクスに及ぼす影響を時間分解光電子分光法により調べた。その結果、グラフェンとSiC基板は共通であるのに関わらず、Si面グラフェンとC面グラフェンでキャリアダイナミクスの緩和時間が大きく異なり、界面状態での緩和が示唆される結果が得られた。Si面およびC面グラフェンにおける界面状態密度とグラフェンの状態密度を見積もったところ、Si面グラフェンでは界面状態でのキャリア再結合、C面グラフェンではグラフェン内でのキャリア再結合が緩和時間を決めていることを明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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