研究課題/領域番号 |
15J11978
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
筒場 豊和 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ニトリルオキシド / 1,3双極子付加環化反応 / 無触媒、無溶媒反応 / クリック反応 / 高分子ニトリルオキシド / 高分子連結 / 特殊構造高分子 |
研究実績の概要 |
安定ニトリルオキシドを用いたクリック反応は新規分子連結法として大きな可能性を秘めており、申請者は種々の重合法で得られた高分子鎖の末端ニトリルオキシドを導入する手法を確立することで様々な性質を有する高分子ニトリルオキシドの合成が可能となり、従来の合成法より簡便かつ高収率で精密な機能性高分子が構築できるという着想に至った。初年度はニトリルオキシドに様々な原子団や置換基を導入するため、アルコキシドなどのヘテロ原子求核剤からニトリルオキシドの安定な前駆体であるニトロアルカンを経由することで新規安定ニトリルオキシドを合成した。この合成法の確立により、重合開始種となる水酸基を有するニトロアルカンだけではなく、原子移動ラジカル重合(ATRP)開始剤、メタクリレートモノマーも合成することができた。またヘテロ原子の導入によりニトリルオキシドの電子状態が変化し、その反応性に違いが生じることを見出した。次にニトロアルカン構造を導入したリビング重合開始剤からポリマー鎖を成長させ、全ての高分子鎖末端にニトロアルカンを導入し、高分子反応によってニトリルオキシド化することで高分子末端ニトリルオキシドを高収率で合成した。この手法により、リビング開環重合、ATRPからポリラクチド、ポリスチレン等の様々な主鎖構造の高分子ニトリルオキシドの合成に成功した。さらにこの高分子ニトリルオキシドと末端アルケン化合物との無触媒、無溶媒下でのジブロックコポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーを高転化率、高収率で合成した。またこの反応は無溶媒中でも効率的に進行し、溶媒中の反応に比べて短時間で反応が完結するという利点も見られた。またこれらの反応はいずれも高分子末端の反応にも関わらず非常に高転化率で進行することから、ニトリルオキシドのクリック反応としての高い反応性を表した系であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、初年度は高分子ニトリルオキシド合成を対象とし研究を行う予定であった。しかしながら本研究において用いたニトリルオキシドの前駆体であるニトロアルカンは官能基受容性が非常に高く、一部の酸、塩基触媒及びラジカル存在下においても安定であったため、様々なリビング重合系に適用可能であった、そのため予定よりも迅速に研究が進み、様々な主鎖構造の高分子ニトリルオキシドを早期に合成することができた。その結果2年目の計画である特殊構造高分子の合成に着手することができ、ジブロックコポリマー、スターポリマーの簡便な合成法を見出すに至った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は計画の通り、これまで合成した高分子ニトリルキシドを用いて特殊構造高分子の合成を検討する。初年度ではブロックコポリマーとスターポリマーの合成において高分子ニトリルオキシドの高い反応性を見出したため、さらに複雑な特殊構造高分子の合成について精査する。具体的にはABAトリブロック、ABCトリブロック、ABCDテトラブロックコポリマーなどのシーケンス制御されたブロックポリマーや、ミクトアームスターポリマーやリニア-スターポリマー等の一般的に合成の困難とされる高分子を重合法の異なる、すなわち主鎖構造の極端に異なる高分子同士の連結によって合成する。場合によっては他のクリック反応を併用する。研究のポイントとしては、物性を左右する高分子ニトリルオキシドの選択と反応後の生成物の単離であるが、分取GPC、沈殿分別法、透析法を駆使してこれを達成する予定である。
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