AAアミロイドーシスモデルマウスより摘出した臓器の線維沈着部位をレーザーマイクロダイセクション法により切り出し、糖鎖の硫酸基含有量の分析を行った。その結果、線維非沈着部位の糖鎖と比較して、線維沈着部位は高い硫酸基含有量を示し、線維沈着部位の硫酸基含有量は他の領域と異なる可能性が見出だされた。 AAアミロイドーシス発症の原因蛋白質である血清アミロイドA(SAA)は生体内で高密度リポ蛋白質(HDL)の構成成分の一つとして主に脂質に結合して存在するが、HDLの脂質組成変化がSAAの構造特徴に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、HDLの主要構成脂質であるホスファチジルコリン(PC)を中心に、コレステロール、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)をそれぞれ含むSAA-HDLモデル粒子を作製し、それぞれの粒子におけるSAAの構造特徴を評価した。粒子径や粒子中のSAA分子のαへリックス形成割合は、脂質の組成に関係なく、いずれも同じであった。しかしながら、SAA-HDL(PC/PS)および(PC/PA)は、熱変性実験から求めた活性化エネルギーの値が他の脂質組成の粒子に比べて小さく、また酵素消化実験より、酵素消化の影響を受けやすいことがわかった。さらに、Trp残基周囲の環境を評価するKI消光実験より、SAA-HDL(PC/PA)のTrp残基周囲は他と異なることが明らかとなった。これらの結果は、脂質組成の変化がSAA分子の構造の不安定化や局所構造の変化を促す可能性を示した。 化学合成したSAA1.1および1.3の1-76残基ペプチドを用いて、中性条件下での線維形成評価を行った結果、日本人のAAアミロイドーシス患者において保有頻度が高いSAA1.3の1-76残基ペプチドでは、GAGの添加により、線維を形成することが示唆された。
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