研究課題/領域番号 |
15J12055
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
坂井 勝哉 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 混雑料金 / パレート改善 / 通行権取引制度 / 合流ボトルネック / 出発時刻選択 |
研究実績の概要 |
朝の通勤ラッシュのような道路混雑を解決する一つの手段として混雑課金がある.利用者の渋滞待ち時間に対する限界費用分だけ混雑料金として課することができれば,理論的には渋滞を解消することが可能であることが知られている.その一方で,公平性の問題がある.社会的な制度をスムーズに導入するためには,制度の導入により不利益を被る利用者が存在しないような制度を定める必要性がある.その指標として,パレート改善(利用者全員の費用が小さくなるかせいぜい等しい状態)を満たすような制度を構築することが求められる. 本課題の研究目的は,①時間帯別ボトルネック通行権取引制度の導入が必ずしもパレート改善を達成しないネットワークの条件とそのメカニズムを具体化すること,②多起点1終点1ボトルネックのネットワークにおいて,パレート改善を達成できる時間帯別ボトルネック通行権の発行パターンの条件を求め,その理論を構築すること,の2つであった. 多起点1終点ネットワークとしてV字形のネットワークにおけるモデルを構築し,以下の成果を得た.①通行権取引制度の導入前と導入後の各利用者のコストを比較し,コストの増加している利用者が存在することを示し,その理由が合流部での既得権が失われることによるものであることを明らかにした.②パレート改善を達成するための方法として,ボトルネックの交通容量を各出発地点へあらかじめ配分し,出発地点それぞれに対して通行権を発行するスキームをはじめ,3つのスキームを提案し定式化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで,2起点1終点1ボトルネックのネットワークにおいて,①時間帯別ボトルネック通行権取引制度の導入が必ずしもパレート改善を達成しないことの分析,②パレート改善を達成できる時間帯別ボトルネック通行権の適用方法の構築,いずれも研究成果のとりまとめまで行っている.これらの内容は,「合流ネットワークでのボトルネック通行権取引制度導入時のパレート改善」というタイトルで査読付き論文である『土木学会論文集D3 (土木計画学)』に掲載されている.また,エジプト日本科学技術大学(E-JUST)にて土木工学専攻の教員・学生を対象としたセミナーを開催し,本研究課題で対象としている通行権取引制度とパレート改善について,国際的な情報発信を行った.
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は,さらに仮定を一般化したモデルの記述を行う予定である.これを遂行することを目的として,これまでに構築したモデルについてリーズ大学およびカリフォルニア大学バークレー校の著名な研究者と研究打合せをすでに行っており,そのアドバイスに基づいてモデルの仮定を緩和し,より一般的なモデルを構築する予定である.このことをより効率的に行うため,海外の大学に滞在し,当該分野で最先端の研究者と共同で取り組む予定である.また,国際的な情報発信を積極的に行うために,これまでにまとまった成果を国際ジャーナルへ投稿する予定である.
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