研究課題/領域番号 |
15J12082
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
奈良 優 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 売買春 / 風俗 / 私娼 / 東京府 |
研究実績の概要 |
今年度は本研究の目的の第一である、戦前の東京府における性風俗産業(公娼を除く)の構造を明らかにすることにつとめた。 主に前期は芸者を中心とする三業地の構造やそこで働く人々の概要の把握に努めた。その結果、当該期の性風俗産業を構成していた構成要素のうち、とくに斡旋業者の活動が重要であることに気づき、後半は性風俗に人材を斡旋していた業者の業態の解明にシフトした。それによって明らかになったのは、当該期の性風俗産業への就業が比較的困難であり、貧困を背景に身売りを試みた人々の4割程度は就業できずに地方へ流れていったということである。これらの成果をまとめ、2度学会で報告した。 それと同時並行で、申請者これまで明らかにしてきた東京府の私娼の実態やそれに対する規制のながれをまとめ、ベルギーのLeuven大学、ドイツのRuhr大学で報告した。 1月以降は戦時下の風俗産業のひとつであるダンスホールに焦点を当てた。そこでは具体的にどのような人々によって何が行われ、どのようなことが問題視されたのか、そして、なぜ他の風俗産業よりも特に厳しい処遇を受け、全面禁止されたのかを分析した。ここではこれまで使われてこなかった内務省警保局の資料を用いて、内務省が早々にダンスホールを閉鎖を決定したのは、男女がダンスを介して自由に交友することが、家庭制度を崩壊させる危険性があると認識していたからであることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は多少計画していた研究対象の順番が前後してはいるものの、全体の進度としては順調であり、学会への成果の報告もできているからである。
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今後の研究の推進方策 |
芸者とダンスホールの中間に位置するカフェーの女給に焦点をあてて検討していく予定である。まずはカフェーの女給の出自や就業した層、そしてカフェーにきた客層を分析し、そこからどういった人々の意識のもとにカフェーが戦前の都市で流行したのかを検討する。そしてそれに対し警視庁はどのような姿勢をとり、規制を行ったのか、そしてこれまで公娼制度を批判してきた廃娼運動家たちはカフェーに対していかなる姿勢をとるのかを明らかにしたい。 この作業によって戦前の東京における芸者、カフェー、私娼、ダンスホールといった様々な性風俗産業を比較しながらその全体像を把握し、戦前日本における性風俗産業がどのように時代とともに変遷していったのかを明らかにしたい。
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