研究課題
本研究は,一般の医療機関における生体分子分析とその診療への活用を実現するために,「分析に必要な全ての要素を小型化し,1枚のチップに集積化することで,微量試料の迅速自動分析を可能とする」マイクロ化学分析システムの開発を目的とする.本年度は下記の2点について検討を行った.1.本研究では,マイクロ化学分析システムの分離部として,高分離能力を有する「μmサイズの柱が規則的に並んだ流路(ピラーアレイカラム)」を採用している.生体分子等の高極性分子の分離に対しては,親水性修飾したカラムが適している.このため,親水性基であるアミド基で修飾したピラーアレイカラムの開発を行ない,その生体分析への応用として,生体チオールの分離を行った.(1)従来LCのアミド修飾カラムを用いて,生体チオール濃度が健常状態と病態でどのように変化するかを評価した.具体的には,ホモシスチン尿症モデルマウスにおいて,γ-グルタミルシステイン等の濃度が減少することを初めて明らかにした.(2)昨年度確立したピラーアレイカラムのアミド修飾手法の改良を行った.具体的には,反応溶液の試薬濃度を再検討し,「反応中にマイクロ流路が詰まりやすい」という問題を解決した.さらに,アミド修飾ピラーアレイカラムを用いて,蛍光誘導体化した6種生体チオールの40秒以内の迅速分離を達成した.2.検出の高感度化を達成するために,マイクロ化学分析システムの誘導体化反応部として,分離成分と誘導体化試薬の混合ユニット(ポストカラムミキサー)の開発を始めた.ポストカラムミキサーの要件は,「溶液の流れ方向には混合性が低く,その垂直方向には混合性が高い」流路構造である.これを満たす構造を,計算流体力学シミュレーションにより探索した.
2: おおむね順調に進展している
2年めの目標であった「生体分子の保持増大」を分離流路表面の親水化により十分に達成し,また,3年めの目標であった「誘導体化反応部の開発」を前倒しして始めており,研究はおおむね順調に進展していると言える.
誘導体化反応部の開発を行う.また,生体中の存在量が微量な分子の分析を可能にするために,ピラーアレイカラムの試料注入部に,目的分子の濃縮部を作製する.さらに,濃縮部,アミド修飾した分離部,誘導体化反応部を組み合わせたチップを作製し,生体分析に応用する.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
Analytical Chemistry
巻: 88 ページ: 6485-6491
10.1021/acs.analchem.6b01201
Chromatography
巻: 37 ページ: 147-151
10.15583/jpchrom.2016.015