研究課題/領域番号 |
15J12135
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
横澤 孝章 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 超新星爆発メカニズム / iKAGRA観測 / 親星コアの回転 / 重力波検出シミュレーション / ニュートリノ検出シミュレーション |
研究実績の概要 |
申請者は主に、超新星爆発の先駆的解析手法の研究、2015年度末に行われたiKAGRA観測に向けた準備を中心に行ってきた。これまでの超新星爆発に関する精力的な光学観測、理論の発達、1987Aからのニュートリノ観測により、おおまかな爆発メカニズムやそれによって放出されるエネルギーの大きさが明らかになりつつあるが、詳細なメカニズムの解明にはまだ至っていない。そこで星の中心部の情報を直接運んでくる重力波・ニュートリノの同時観測によるメカニズム解明に向けた先駆的研究を行っている。 今年度の研究実績の一つとして、コアバウンス前後に放出される重力波・ニュートリノの同時解析によって親星コアの回転を定量的に評価する解析手法の確立を行った。コアバウンスの際に親星中心が回転している場合、非球対称な動きにより大きな重力波が放出されるが、コアが回転していな場合は重力波が放出されない。このことを利用して中性子化バーストとの時間差を測定することで親星コアの回転に関して言及するできる。検出器としてKAGRA重力波検出器、スーパーカミオカンデ検出器にガドリニウムを導入する、SK-Gd検出器を仮定し、検出シミュレーションを行い、信号観測時間とその分解能を算出する手法を開発した。結果、天の川銀河内超新星爆発において十分観測可能なことを示し、ベテルギウスなどの近傍超新星爆発が発生した場合には高確率で評価できることを定量的に示した。これは2回の国際会議で後方報告を行い、Astrophysical journalへ投稿した。 また、2015年度末に行われたiKAGRA観測に向けて直接現地に赴き、制御用計算機の配線・データ取得システムに用いる回路の性能評価、検出器環境(地面振動や環境磁場)を測定するための装置の設置等を行った。現在、iKAGRA取得データの解析を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
重力波・ニュートリノの同時観測による超新星爆発メカニズム解明という、先駆的な解析を行うことによって論文を投稿することができた。近年、マルチメッセンジャー天文学(重力波、光学、ニュートリノなど複数の信号を同時に観測して天文学に言及する学問)が活発化しており、申請者は、重力波データ解析グループ・ニュートリノ観測グループ・超新星爆発理論グループと協力して先駆的に研究を行ってきた。さらに2015年9月14日にアメリカのLIGO検出器が世界で初めてブラックホール連星からの重力波の観測に成功し、さらに注目を集めている。 次回の天の川銀河内超新星爆発が発生した際にメカニズム解明により迫れるように先駆的研究はこれからも精力的に行っていく必要がある。 当初2015年12月に観測を予定していたiKAGRA観測が、2015年度末に移行したため、そのためのデータ解析がまだ終了してないが、その解析も順次行っていくことを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
超新星爆発メカニズム解明に向けて、衝撃波の停滞と復活メカニズム解明は未解決ながら非常に重要な研究課題である。現在、ニュートリノ駆動型超新星爆発モデルが最有力であり、鉄コア内の伝搬中にエネルギーを失い停滞した衝撃波はニュートリノからエネルギーを供給され復活するというメカニズムである。その際に鍵となる物理現象は、動径方向以外の膠着物質の動きや、衝撃波面の不安定さなどが複数次元の超新星爆発数値シミュレーションの結果から示唆されている。特にSASI(Standing Accretion Shock Instability)が発生すると、その衝撃波面の非球対称性や膠着物質の非球対称性から重力波や、ニュートリノルミノシティの時間揺らぎが発生すると予言されている。 申請者は、このSASIからの重力波やニュートリノの特徴的信号を実検出器・もしくは建設が予定されている検出器を用いて観測可能かということを評価するための研究を始めている。今後はこの研究の解明を優先的に行っていく予定である。ニュートリノルミノシティの時間変化を評価する上で、デルタ・シグマ変調器の原理を利用した時系列信号filterを用いて信号再構成を行い、観測ニュートリノ数によるポアソン統計由来のルミノシティ揺らぎとの選別を行えるかという評価を行い、前年度の日本物理学会等で発表を行った。 鏡を低温にし、full configurationでのKAGRA検出器観測が2017年度に予定されている。子の観測に向けた重力波検出解析ソフトウェアの開発も同時に進めていく。その上で環境雑音の理解とその除去方法等を検出器サイトに赴き、積極的に議論を行いながら進めていくことを計画している。
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