抗原キャリアのアジュバント機能を高めるために、Toll様受容体リガンド分子であるCpG-DNAをpH応答性高分子修飾リポソームに複合化させ、その複合化法が免疫誘導機能にどのような影響を与えるかを検討した。リポソーム作製時にCpG-DNA溶液を混合するPre-mix複合体とリポソームを予め作製してからCpG-DNA溶液を混合するPost-mix複合体を作製した。前年度までに、Post-mix複合体はPre-mix複合体よりもDCの共刺激分子(CD80)の発現を誘導する能力が高く、抗腫瘍効果も高いことを明らかにした。本年度はPost-mix複合体のDCへのCpG-DNAデリバリー機能を調べるために、Post-mix複合体をDCの培養液に加えてからの経過時間を変え、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。Post-mix添加30分後からリポソームとCpG-DNAが同時に取り込まれているような画像が得られた。これはPost-mix法で複合体を調製した場合、CpG-DNAがリポソームと複合化していることを示唆する結果である。 抗原キャリアにアジュバント機能を付与するもう一つの方法として、生理活性多糖を主鎖とするpH応答性高分子を用いて、抗原の細胞質送達機能とアジュバント作用を併せ持つ多機能性多糖を設計した。カードランは、DCの細胞膜表面に発現する受容体Dectin-1と相互作用してDCを活性化させることが知られている。そこで、カードランにpH応答性基を導入し、pH応答性カードラン誘導体を合成した。pH応答性カードラン誘導体修飾リポソームはDCの細胞質内に抗原をデリバリーし、マウスに皮下投与すると脾細胞から強い抗原特異的なIFN-γ産生がみられた。以上の諸成果は細胞性免疫を誘導するための抗原キャリアには細胞質内デリバリー機能とアジュバント機能を付与することが重要であることを示唆している。
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