研究課題/領域番号 |
15J12187
|
研究機関 | 京都文教大学 |
研究代表者 |
平田 晶子 京都文教大学, 総合社会学部 総合社会学科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
キーワード | 境域 / 伝統芸能、音楽 / 知的財産権・著作権 / 法規制 |
研究実績の概要 |
本研究は、東南アジア大陸部中央のタイとラオスの境域付近に居住する、山地民モン・クメール系住民ソーの人々に歌い継がれてきたラム(Lam)に関する音楽・芸能研究である。まず、初年度は、今後の研究の重要な柱の一つでもある、知的財産権や著作法に関する基礎的調査をタイ側とラオス側の双方で行ったことが成果としてあげられる。その初期的な研究成果を第6回南・東南アジア社会宗教学会で「Privatization of Local Music in the Sphere of Khap Lam Melodies」という題目で口頭発表した。大会のテーマが“Heritage as Prime Mover in History, Culture and Religion of South and Southeast Asia”だったこと、また大会に参加した東南アジア研究者が、ASEAN共同体の形成と文化社会への影響にも関心を寄せていたことなどから、研究発表後にフロアからは多角的な意見をいただき、活発な質疑応答が交わされた。その後、カンフェランス・ペーパーをドイツのフンボルトに拠点を置く東南アジア研究コミュニケーション・センターが刊行する査読付きの国際学術刊行物“Tai Culture”に投稿論文として投稿する機会を得た。論文の題目は“From Shared Melodies to Consumed Melodies : The Emerging New Concept of Privatizing Traditional Music Knowledge in the Moo Lam Music Region”で今年中に刊行される。この論文では、タイとラオスの境域付近に形成されてきたカップ・ラム歌唱圏における旋律の資源化と所有をめぐる著作権・知的財産権問題について明らかにした。また初年度は、複数の研究会やセミナーにも参加する機会を得たことで、研究テーマに関わるテーマを複数の原稿にまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、当初の計画通り、国外の研究大会で報告したカンフェランス・ペーパーを査読付の国際学術刊行物に論文として投稿することができた。加えて海外調査では、今後の研究で吟味する知的財産権・著作権法に関する資料をタイとラオスの両方の法的機関で行うことができた。ラオスでは法務省、タイ側では首都バンコクにある知的財産権裁判所図書館センターにて最高裁データバンクで確認済みの判例の全文を収集することができた。また東北タイでは、サコンナコン、ナコンパトム、マハーサラカームの10年以上交流が続いている知人・友人ネットワークから、著作権問題に関係する東北地方の芸能者たちとも知り合うことができ、如何に知財法・著作権法の整備化に対応しながら、メディア機器を用いた新たな芸能戦略を行っているかを参与観察することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度には国外の研究大会だけではなく、国内の研究会やセミナーなどにも参加しながら、研究成果を報告してきた。それを複数の原稿にまとめてきたので、2年次はこれらを国内の学術刊行物・学会誌に査読論文として投稿していく。
|