研究課題/領域番号 |
15J12187
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研究機関 | 京都文教大学 |
研究代表者 |
平田 晶子 京都文教大学, 総合社会学部 総合社会学科, 特別研究員(PD) (70769372)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 境域 / 伝統芸能 / 知的財産権・著作権 / 法規制 |
研究実績の概要 |
第2年次は、主に初年度の国外調査や研究会等を通して得た資料や知見を総合的にまとめ、研究成果物を生産していくことに専念した。以下、フィールド調査、海外と国内の研究活動に分けてまとめる。 【海外短期調査】仏教伝統に根ざした語り物世界と、モーラムスィンにみるデジタル技術という現代的な現象が同居する現在を複眼的に捉える現地調査を春季休暇を利用して実施した。 【海外活動】IUAES国際大会で分科会「The survival strategy of traditional performing artists in the face of globalization and expansion of mass media」を組織し、フランス、中国、日本からの研究者が研究成果を報告し合い、ポストモダンにみる芸能研究の可能性について知的交流・意見交換ができる場を設けた。東北地方の芸能者たちがソーシャル・メディアを活用しながら如何なる芸能経営戦略を行っているか、また著作権法などの法的規制の問題に如何にして対応しているかについて実証的データを用いながら理論との接合を図った。 【国内】①平成27年度日本文化人類学会主催若手奨励セミナーでの報告内容を研究論文にまとめ、学会誌『文化人類学』に提出した。②本年度の7月日本タイ学会で報告した「イサーン・ルネッサンス?―文化評価システムの確立とモーラム芸能者の政治的・教育的活動の関係から―」を京都大学東南アジア研究所が刊行する『東南アジア』に投稿論文として提出した。③国立民族学博物館共同研究「東南アジアのポピュラーカルチャー:アイデンティティ、国家、グローバル化」(代表:福岡まどか)での報告内容「グローバル化するタイ東北地方音楽モーラム――聴かせる・魅せる・繋がる」を共同研究出版事業に合わせ、越境するモーラム音楽の生産・流通・消費について執筆し、寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出版予定分も含めて査読付の論文4本、学会発表3回(国内2回、国外1回)と成果発表を行い、更に短期の調査研究によって新たな展開への道筋を見いだすことができ、十分な研究調査の進展を図ることができた。 具体的には、グローバル化の中での文化復興の意義についてシンポジウムを開催し、グローバル化の中でのモーラムの展開に関する研究をまとめるなど、従来から行ってきた研究を着実にアウトプットするのみならず、デジタル技術を用いた身体技法など新たな分野にも一定の成果を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、今年度国内外の学会や研究会で報告した内容(タイ・ラオスの境域付近にみる芸能者を含む人びとのソーシャルメディア活用をめぐるコミュニケーションの変化)をモノグラフとして完成させ、国立民族学博物館の刊行物に寄稿する。また国民国家建設(仏教化、ラオ人化)が目下進行中のラオスを拠点とし、モンクメール系住民の歌唱や民間治療の営為から残る「カー・ソーらしさ」について人類学・言語学的分析を持ちこみながら 国立遺伝学研究所共同研究事業「オーストリック民族の起源・民族移動過程の検証:インドシナ半島・島嶼部間の少数民族を中心に」(代表:奥島美夏)に連動させて、査読論文として完成させる。
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